「国民的反体制文化」（笑）の継承 （不定期連載『異議申し立てのための文化的インフラ』）

「異議申し立てのための文化的インフラ」シリーズの一環として、こちら↓の記事で、フランスのジョルジュ・ブラッサンス（Georges Brassens）という詩人で歌手であった人の紹介をしました。

■「反体制」は「国民的文化」（笑）： ジョルジュ・ブラッサンス（フランスの詩人・歌手）　（不定期連載『異議申し立てのための文化的インフラ』）
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-938.html

「異議申し立てのための文化的インフラ」があると考えながらこういうシリーズを書いている以上、その「インフラ」が確かに人々の中に定着しているということを示すのもこのシリーズの意義である、というわけで、この人の作品がどれだけフランス社会に浸透していて愛好されているかについて説明してみようというわけです。そのことはフランスのことを知らないとなかなかわかりにくいと思い、それを具体的にイメージしていただくために、今回は彼の作品を他のアーティストがカバーしたものを二つ拾いました。

まず、人気レゲエ・スカ・グループ、シンセミリア（Sinsemilia）による、「悪い噂」（La mauvaise réputation）の1998年発表のカバー。この歌がブラッサンスによって発表された1952年、当然このグループのメンバーは誰一人としてこの世に生まれていません。しかし、ある音楽潮流の世代から別の音楽潮流の世代へと元の作品のエスプリが受け継がれて発展してゆく様子がこのかっこいいアレンジから聞こえてきます。

■Sinsemilia : La mauvaise réputation

http://www.youtube.com/watch?v=A1IAnGfMoKE

原曲はこちら。
http://www.dailymotion.com/video/x2kfvo_georges-brassens-la-mauvaise-reputa_music

■悪い噂　　（La mauvaise réputation）

　　作詞作曲：ジョルジュ・ブラッサンス　　（訳：こちら、ただし少し手直ししました）

　村じゃ　どうういう訳か
　俺は評判良くない
　何かにつけて
　えたいの知れない男で通ってるらしい　　　　　　　　　　　　
　俺は誰も欺かずに
　平凡な善人で生きてるつもりだが
　律義な連中は
　そこが変わり者だとご機嫌ななめだ
　みんな俺を悪し様に言う
　無論　口のきけない人は別だが
　
　七月十四日の祭りの日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　パレードの楽隊なんて
　関係ないと
　ベッドにふかふか寝そべって
　俺は誰も欺かずに
　けたたましいラッパにウンザリしてるだけなのに
　律義な連中は
　そこが変わり者だとご機嫌ななめだ
　みんな俺に後ろ指をさす
　無論　手のない人は別だが

　百姓に追っかけられている
　ヘマな泥棒に出くわして
　正直なとこ足で一寸かばったら
　追手が地面にひっくりかえった
　俺はだれも欺かずに
　リンゴ泥棒を逃がしてやっただけなのに
　律義な連中は
　そこが変わり者だとご機嫌ななめだ
　みんな俺におどりかかる
　無論　歩けない人は別だが

　預言者エレミヤじゃなくったって
　自分の行く末は解る
　手ごろな縄が見付かったら
　奴等は俺の首に掛けるだろう
　俺は誰も欺かずに
　ローマへは通じない道を歩いているだけなのに
　律義な連中は
　そこが変わり者だとご機嫌ななめだ
　みんな俺が吊るされるのを見に来る
　無論　目のみえない人は別だが

（引用ここまで）

そして、今回の目玉（？）は、現フランス大統領夫人、カーラ・ブルーニによるカバー。（笑）より正確には、後にニコラ・サルコジー・フランス大統領と結婚する前のカーラ・ブルーニによるカバー。曲は、1972年の「フェルナンド」（Fernande）という歌。カーラ・ブルーニは、歌う前に、「これはジョルジュ・ブラッサンスの歌です。ラジオでは禁止された歌です。歌わないほうがいいと人に言われましたが、それでも歌います」と言って歌い始めます。こういう歌を歌っているから、カーラ・ブルーニはSENZA FINEさんからこんなことを言われてしまうのでしょう。（笑）まあこれもフランス文化といえばフランス文化なので...。

■Carla Bruni - Fernande

秋の夜長、これらの曲を楽しみながら、「異議申し立てのための文化的インフラ」がフランスに定着している様子を感じていただければうれしいです。

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