
2022年8月6日、8月9日と、アジア諸国と世界を相手に戦争を起こした大日本帝国を降伏させるための原爆投下についての記事を書いた時、「日本人と日本国と日本の報道業者などが、毎年8月6日(と9日)に原爆の被害を語り、原爆の被害者・被害国としての体験や反戦を語るのを見る時、年ごとにどんどん罪悪感を感じるようになりました」とどうしても書かざるをえませんでした。
当時の日本は原子爆弾という非人道的な平気で多くの人々を殺傷されましたが、当時の日本自身が、対アジア侵略で現地で暴虐の限りを尽くしていたのですから。原子爆弾の非人道性を世界に訴えるなら、大日本帝国の非人道性を世界に訴えるのもまた、当然だからです。そして、現在の日本国と日本人(の大部分)は、自分たちの祖先が受けた被害は世界に訴えるのに、自分たちの祖先がなした加害はまるでなかったかのように振る舞っているのですから、うちのような小さなブログとしては、日本(大日本帝国)による加害に積極的に言及しなければならないと思うのも自然なことです。
日本に当時落とされた原子爆弾は非人道的でした。それと同じく、日本が当時なした諸国と諸国民への加害も非人道的でした。どんなに日本人に皆さんにウケなくても言わずにはいられません。
そういうことを何度も書いていたら、宮武嶺弁護士のブログ、「Everyone says I love you !」の2022年8月15日の記事、「
終戦記念日に岸田首相が「私たちが享受している平和と繁栄は戦没者の皆さまの尊い命と苦難の歴史の上に築かれたもの」。日本が侵略戦争をしたことで2000万人のアジアの方々の命を奪ったことを忘れるな。」でも言及いただきました。
私の論理と倫理は決して間違っていないという励ましをいただいた宮武嶺さんに感謝しつつ、今回取り上げたいのは、最近毎日新聞や朝日新聞の堕落に失望した人たちに支持されているという東京新聞の8月15日社説です。(ツイッターで「 #さよなら朝日新聞 」というハッシュタグがあって、そのハッシュタグ付きのいろいろな方のツイートを見ると、朝日新聞をやめて東京新聞にする(した)という方が何人もいます。
東京新聞はリベラルな人たちからけっこう評価されている新聞ですが、私から見たら、不満を感じることが多い新聞です。紙版とネット版を全部読んでから批判せよという方もいると思いますが、サンプリング的にネットから選んでいくつか読むだけでも、維新についての多くの報道はかなりひどいと思いますし(-->
実例がこちら)、自民党幹部の発言を批判精神なしでただなぞるだけの記事だってありますし、外国の独裁政府についてはあれこれ詳しく報じるのにそれと同じ姿勢をどうして自民党政府には発揮しないのかと思わされることもあります。私の新聞への要求水準は高いのです。
さて今年の東京新聞の8月15日社説。記録のためにお持ち帰りし、一段落一段落メスを入れてみましょう。社説丸ごと批判なので、引用部分も含めて、かなり長くなります。最後までお付き合いいただけるとうれしいです。
●東京新聞 TOKYO Web
<社説>終戦の日に考える 国民を死なせないよう
https://www.tokyo-np.co.jp/article/195981
2022年8月15日 07時40分
国、あるいは政権や政府って何のためにあるんでしょう。やっぱり、煎じ詰めれば国民を幸せにするため、ですよね。でも幸福感というのはいささか曖昧。もっと端的に政権や政府の最低限の存在意義を定義してみるなら、結局、こうなるんじゃないでしょうか。
国民をなるべく死なせないようにする−。
実際、国が血税を使って実行する医療、福祉、防災などの施策を考えてみてください。どれも究極的には国民をなるべく死なせないようにするための取り組みです。
◆世界で最も○○な国
例えば、厚生労働省のデータによれば、日本の新生児死亡率(出生千人比)は一九四七年には三一・四でした。それが六七年に初めて一〇を切り、二〇一四年以降は一未満。数カ国が到達しているだけの世界最高水準の数字です。
その“逆”もまたしかりで、国連人口基金が発表した二二年版世界人口白書によれば、日本の平均寿命は男女とも世界一位タイ(男性八十二歳、女性八十八歳)。一九五〇年の数値と比べれば男女とも二十数歳も長生きになっています。
出生数の減少も含めた「少子高齢化」は人口構造上の大問題ではあったとしても、世界で最も生まれた子が亡くなりにくい国の一つであり、かつ世界一の長寿国の一つであるとは、つまり「世界で最も国民が死ににくい国」の一つということでありましょう。
新型コロナウイルスによる死者も同様です。日本でも三万五千人を超えてはいますが、米国の死者は百万人以上で、十数万人を数える英独仏と比べてもいかに少ないか分かります。報告が不正確な国もある上、データは日々変動するので何事も確言はできませんが、少し前には、海外メディアが、人口百万人当たり死者数は日本が先進国では最少だと、やや驚きをもって報じたこともありました。
衛生観念の高い国民性の寄与が大きいのかもしれず、全部が政権や政府の手柄と言うつもりはありません。でも、結果として「世界で最もコロナで国民が死ににくい国」の一つになっている、ぐらいは言えるのかもしれません。
こうした結果からみれば、これまでの政権や政府は、少なくとも最低限の存在意義にはかなっていると評価してよいでしょう。
ただ、それもこれもすべて、七十七年前の今日より後の話です。
◆戦争=存在意義の正反対
一九四五年八月十五日。国民は初めて、長かった戦争が終わったことを知らされます。
政府によれば、日中戦争・太平洋戦争の戦没者数は計三百十万人。年別の戦没者数は公表していませんが、歴史学者の吉田裕氏が岩手県のデータを援用して推計した結果が、著書『日本軍兵士−アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)にあります。
正直、驚きました。実に九割が四四年一月以降に亡くなったとみられるというのです。もし国指導部の戦争終結判断がもう少し早かったならと、どうしても、そう考えずにはいられません。
どうでしょう。国民を戦争へ導き、退(ひ)き時も見誤って三百万人以上を死なせる…。この時代、本来は国民をなるべく死なせないようにするために存在するはずの国、政権、政府が、それとはまるで逆のことをしていたわけです。
第二次大戦後も戦争は絶えません。例えば、米国はベトナム戦争やイラク戦争などいくつもの戦争で多数の戦死者を出しています。無論、ロシアのウクライナ侵攻による戦争が続いており、今この時も犠牲者は増え続けています。
でも翻って、日本は戦後、一度も戦争をしていません。国民をなるべく死なせないようにする、という政権や政府の存在意義からすれば当然ですが、それが守られてきたことの意味は決して軽くありません。
しかし、ここ何年かの間に、急に怪しくなってきています。
◆政権や政府チェックする
大きかったのは集団的自衛権の行使容認と安保法制の成立。他国の戦争に巻き込まれる蓋然(がいぜん)性が高くなった。岸田政権も敵基地攻撃能力の保持を狙っており、「専守防衛」というわが国平和主義の根幹も骨抜きにされかけています。
こうした方針にはたいてい「国民の命を守るため」といった釈明が付きます。でも、忘れないでおきましょう。前にも書いたように「戦争」は最初から「戦争」の顔をしているとは限りません。むしろ、最初は「平和」の顔をしていることさえあるのです。
国民をなるべく死なせないようにする、という最低限の存在意義に本当にかなっているか−。政権や政府が何かしようとするときにはいつでも、そう厳しく問い続けていくべきなのだと思います。
(転載ここまで)
さて、いかがだったでしょうか。当たり前の内容が書いてあって別に問題はないと思った方もいらっしゃると思いますが、私にとっては全く物足りない社説です。というか、真っ当な指摘もありながらも、問題点がそれ以上にたくさんある、かなり質の低い社説だと言わざるをえません。
まず、題名です。「終戦の日に考える 国民を死なせないよう」というのですが、「死なせない」だけでは、あまりにも政治への要求水準が低いと言わざるをえません。単なるタイトルにすぎないのかもしれませんが、「死なせない」だけでは民主国の政府として失格です。詳しくは本文の一段落一段落ごとの批評を通じて述べていきます。
最初の段落はこうです。
国、あるいは政権や政府って何のためにあるんでしょう。やっぱり、煎じ詰めれば国民を幸せにするため、ですよね。でも幸福感というのはいささか曖昧。もっと端的に政権や政府の最低限の存在意義を定義してみるなら、結局、こうなるんじゃないでしょうか。
国民をなるべく死なせないようにする−。
実際、国が血税を使って実行する医療、福祉、防災などの施策を考えてみてください。どれも究極的には国民をなるべく死なせないようにするための取り組みです。
(引用中断)
政権や政府の存在理由として、「煎じ詰めれば国民を幸せにするため」とも言っていますが、「究極的には国民をなるべく死なせないようにするための取り組み」と、政府や政権への判断基準を勝手に緩めてしまっています。私としては受け入れられない甘さです。
「国が血税を使って実行する医療、福祉、防災などの施策」という言葉が使われています。だけど、待ってください。これらは自民党政府や維新府政ができるだけ予算を増やしたがらない分野、はっきり言えば削ろうとしている分野ではありませんか。「国民をなるべく死なせないようにするための取り組み」を縮小しようとしているのですよ、自民党政府や維新府政は。「国民を死なせないよう」という甘い判断基準でさえ、自民党政府も維新府政も失格ではありませんか。
最初の段落から、リベラル派に評価の高い東京新聞社説はいきなり甘さを露呈してしまいます。
次の段落はこうです。
◆世界で最も○○な国
例えば、厚生労働省のデータによれば、日本の新生児死亡率(出生千人比)は一九四七年には三一・四でした。それが六七年に初めて一〇を切り、二〇一四年以降は一未満。数カ国が到達しているだけの世界最高水準の数字です。
その“逆”もまたしかりで、国連人口基金が発表した二二年版世界人口白書によれば、日本の平均寿命は男女とも世界一位タイ(男性八十二歳、女性八十八歳)。一九五〇年の数値と比べれば男女とも二十数歳も長生きになっています。
出生数の減少も含めた「少子高齢化」は人口構造上の大問題ではあったとしても、世界で最も生まれた子が亡くなりにくい国の一つであり、かつ世界一の長寿国の一つであるとは、つまり「世界で最も国民が死ににくい国」の一つということでありましょう。
新型コロナウイルスによる死者も同様です。日本でも三万五千人を超えてはいますが、米国の死者は百万人以上で、十数万人を数える英独仏と比べてもいかに少ないか分かります。報告が不正確な国もある上、データは日々変動するので何事も確言はできませんが、少し前には、海外メディアが、人口百万人当たり死者数は日本が先進国では最少だと、やや驚きをもって報じたこともありました。
衛生観念の高い国民性の寄与が大きいのかもしれず、全部が政権や政府の手柄と言うつもりはありません。でも、結果として「世界で最もコロナで国民が死ににくい国」の一つになっている、ぐらいは言えるのかもしれません。
こうした結果からみれば、これまでの政権や政府は、少なくとも最低限の存在意義にはかなっていると評価してよいでしょう。
ただ、それもこれもすべて、七十七年前の今日より後の話です。
(引用中断)
新生児死亡率の低さと平均寿命の高さを理由としてあげて、「『世界で最も国民が死ににくい国』の一つということでありましょう」と言うのですが、これは、政治や政府や政権や与党自民党のおかげでしょうか?むしろ、医学の進歩によるものではないでしょうか。あるいは、食文化などによるものではないのでしょうか。日本人の平均寿命の長さの理由が何なのか科学的、医学的研究を参照する必要はあるのでしょうが、「世界で最も国民が死ににくい国」であることが政府のおかげだと言わんばかりなのはおかしいでしょう。
さすがに、「出生数の減少も含めた『少子高齢化』は人口構造上の大問題ではあったとしても」という記述があります。だけど、まさにそここそが自民党政治の失敗の最も雄弁な例でしょう。労働時間が長く、賃金が十分でなく、奨学金で多額の借金を背負わされ、男女平等も足りず、その結果としての少子化。これすべて自民党政治の無策です。あるいは労働者搾取です。そこにツッコまずに平均寿命の長さを称賛する東京新聞の社説筆者は何が政治の責任や帰結であるかを見誤っています。
さて、平均寿命が長いことを政治のおかげだと言いたげな勢いで、日本のコロナ対策についても、アメリカやヨーロッパ諸国にくらべて死者数が少ないと言ってかなりほめています。
ただ、その理由として、「衛生観念の高い国民性の寄与が大きいのかもしれず」という真っ当な見解を示して、「全部が政権や政府の手柄と言うつもりはありません」と言いますが、その後に「でも、結果として『世界で最もコロナで国民が死ににくい国』の一つになっている、ぐらいは言えるのかもしれません。こうした結果からみれば、これまでの政権や政府は、少なくとも最低限の存在意義にはかなっていると評価してよいでしょう」とかなりの論理的飛躍で政府をほめます。
「全部が政権や政府の手柄と言うつもりはありません」と言いながら、「『世界で最もコロナで国民が死ににくい国』の一つになっている、ぐらいは言えるのかもしれません」と言い、「これまでの政権や政府は、少なくとも最低限の存在意義にはかなっていると評価してよいでしょう」と強引な結論を導きます。
それなら言わせてもらいますが、この瞬間にも、医療機関や保健所などで医療従事者が疲弊し、消費税で病床削減が進められ、正確なPCR検査よりも制度の低い抗原検査が推奨され、それでいて政治家や有名人は感染疑いの時にはPCR検査を平然として受け、一般の人々は感染して病状がひどくなっても入院先が見つからず、自宅での放置を強要される現状があります。これらをすべて忘れて、「少なくとも最低限の存在意義にはかなっていると評価してよいでしょう」とは、あまりにも自民党政府に甘い評価です。東京新聞のどこがリベラルで進歩的で公正なのか、深く疑わざるをえないひどい論理展開の社説です。
うちの最近の記事でこれを出しました。
■感染爆発・病床不足で自民党政府のコロナ対策が全く足りていない事実を直視しましょう、日本の皆さん。 #衆院選2022 #衆院選2023 #衆院選2024 #衆院選2025
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-8686.html2022/08/12 03:00
この記事で思うのは、日本では、医療体制を政府がきちんと整えていれば入院すべき人が入院できていたはずだったということ。そして、死ななくてよい人が多数死んだということです。欧米諸国と死者数だけ比べて日本は少ないからコロナ対策がうまくいっていると主張するのは、政治の効果と公衆衛生についての国民性や生活習慣がそれぞれどのように寄与しているかをごたまぜにすることであり、自民党政治の現実の無策無能を覆い隠すものでしかありません。
「衛生観念の高い国民性の寄与が大きいのかもしれず、全部が政権や政府の手柄と言うつもりはありません」と東京新聞は自ら書いているのですから、何が寄与しているのかを、たとえ不十分であっても切り分けて論じる努力が必要です。少なくとも、何が政権や自民党政府の手柄だったと東京新聞は考えるのか、具体例をあげるべきです。ワクチン接種でしょうか?それとも、アベノマスクでしょうか?(笑)まじめに言えば、アベノマスクは疫学的には無力であり、不織布マスクでなければエアロゾル感染は防げません。ワクチン接種は何らかの寄与はしているかもしれませんが、ワクチンは世界中で使われており、日本政府だけがワクチン接種に関してよい仕事をしたわけではありません。
コロナ感染という現象について何が他国と日本の違いをもたらしたのかを科学的に結論付けるよりもむしろ、新聞としては、日本政府、自民党政府が税金を使って医療体制を支援したかやコロナ禍で営業困難に陥った業者にどのような支援をしたかに焦点を当てるべきです。そうすれば、日本政府の医療体制支援はかなりひどく、今も医療体制がひっ迫していることが大問題であるという指摘をせざるをえないはずです。医療がひっ迫していても死者数が欧米諸国よりも少ないから政権や自民党政府の成功だというのは間違いです。医療のひっ迫を税金で手当てできないなら、それは政治の失敗だと断じるところです。
このように見てくると、この東京新聞の社説は、かなり無理をして自民党政府をほめています。自民党政府の無能無策ぶりの実例を指摘する代わりに、根拠の弱い論理で強引に肯定的評価を自民党政府に与えています。ここまででも、はっきり言ってかなりひどい社説です。
その後にも疑問が多々あります。次の段落を読んでみましょう。
◆戦争=存在意義の正反対
一九四五年八月十五日。国民は初めて、長かった戦争が終わったことを知らされます。
政府によれば、日中戦争・太平洋戦争の戦没者数は計三百十万人。年別の戦没者数は公表していませんが、歴史学者の吉田裕氏が岩手県のデータを援用して推計した結果が、著書『日本軍兵士−アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)にあります。
正直、驚きました。実に九割が四四年一月以降に亡くなったとみられるというのです。もし国指導部の戦争終結判断がもう少し早かったならと、どうしても、そう考えずにはいられません。
どうでしょう。国民を戦争へ導き、退(ひ)き時も見誤って三百万人以上を死なせる…。この時代、本来は国民をなるべく死なせないようにするために存在するはずの国、政権、政府が、それとはまるで逆のことをしていたわけです。
第二次大戦後も戦争は絶えません。例えば、米国はベトナム戦争やイラク戦争などいくつもの戦争で多数の戦死者を出しています。無論、ロシアのウクライナ侵攻による戦争が続いており、今この時も犠牲者は増え続けています。
でも翻って、日本は戦後、一度も戦争をしていません。国民をなるべく死なせないようにする、という政権や政府の存在意義からすれば当然ですが、それが守られてきたことの意味は決して軽くありません。
しかし、ここ何年かの間に、急に怪しくなってきています。
(引用中断)
歴史修正主義者でも大日本帝国主義者でもない真っ当な歴史学者の吉田裕氏の推計を用いているのは良いとして、「日中戦争・太平洋戦争の戦没者数は計三百十万人」だそうですが、これは日本人の死者だけですよね。日本が侵略したアジア諸国の死者数は定説として2000万人超と言われます。この2000万人超への言及がないということは、大日本帝国が多数のアジア人たちを死なせたことを東京新聞の社説筆者は忘れているということです。あるいは、大日本帝国が多数のアジア人たちを死なせたことを東京新聞の社説筆者は読者に思い出させないようにしているということです。そう言われてもしかたのない無頓着ぶり、無反省ぶりです。ここはひどすぎます。
大日本帝国がそのように多数の人を殺したのに対して1945年以降の日本人の戦争死者はいないというのは、日本は朝鮮戦争に加担して日本ではない戦地で人々が死ぬことと引き換えに戦争特需という名の利益を得たことを考えたら、あまり意味のある比較ではないと思います。
ただ、いずれにしても、戦争は生命の軽視であり、決して向かってはならない方向であるという意識から、「しかし、ここ何年かの間に、急に怪しくなってきています」というのは、この社説でまあまあ評価できる数少ない部分へのイントロです。
だけど、これだけ長い社説で評価できる部分が少ないというのは悲しいものです。
次は最後の段落です。
◆政権や政府チェックする
大きかったのは集団的自衛権の行使容認と安保法制の成立。他国の戦争に巻き込まれる蓋然(がいぜん)性が高くなった。岸田政権も敵基地攻撃能力の保持を狙っており、「専守防衛」というわが国平和主義の根幹も骨抜きにされかけています。
こうした方針にはたいてい「国民の命を守るため」といった釈明が付きます。でも、忘れないでおきましょう。前にも書いたように「戦争」は最初から「戦争」の顔をしているとは限りません。むしろ、最初は「平和」の顔をしていることさえあるのです。
国民をなるべく死なせないようにする、という最低限の存在意義に本当にかなっているか−。政権や政府が何かしようとするときにはいつでも、そう厳しく問い続けていくべきなのだと思います。
(引用ここまで)
「政権や政府チェックする」ことは民主主義社会において決定的に重要です。しかし、今までこの社説を読んできてわかるのは、この東京新聞社説は自民党政府の労働政策や男女平等政策やコロナ対策の無策や失敗や失政や誤りや暴政をまるでチェックできていないということです。判断基準を甘くして強引な論理展開で歴代自民党政権の労働政策や男女平等政策やコロナ対策への批判を差し控えています。とても政権や政府をチェックしているとは言えません。とてもリベラル、東京新聞の宣伝文句として使われている「進歩的、公正」という言葉が東京新聞社説のこの不甲斐なさに当てはまるとは言えません。
ただし、その後、最後の部分で、「集団的自衛権の行使容認と安保法制」によって「他国の戦争に巻き込まれる蓋然(がいぜん)性が高くなった」のと、「岸田政権も敵基地攻撃能力の保持を狙っており、『専守防衛』というわが国平和主義の根幹も骨抜きにされかけて」いることも一応は正しく指摘しています。
だけど、社説前半で検証的姿勢無しの物足りない文章、日本がアジア諸国に与えた犠牲や被害への無頓着ぶりを散々見せられた後でこの最後の段落を読んでもインパクトがありません。
繰り返しになりますが、「国民をなるべく死なせないようにする、という最低限の存在意義に本当にかなっているか−」というのは、あまりにも低い判断基準です。あまりにも自民党政府に甘い判断基準です。私がこの社説筆者の上司だったら「没」、「全面的書き直し」を命じるところです。
「政権や政府が何かしようとするときにはいつでも、そう厳しく問い続けていくべきなのだと思います」というのは一般論としては間違っていませんが、この社説では医療、福祉、防災、労働政策、男女平等などについて全然厳しく問い続けていないのですから、この社説の内容自体がこの結論を裏切っています。
すべてのトピックについて、政府のやることを一貫してきびしく批判的にチェックし続けることを東京新聞には求めます。
東京新聞のすべてがこの社説同様にダメだとは言いません。良い記事はあり、意欲的な記者はいるでしょう。だけど、この社説に代表されるような、ダメな記事やダメな問題意識やダメな報道姿勢もまたたくさんあります。私の目から見たら、東京新聞は、「多少は他紙よりましな部分もあるけどダメなところも多い、日本の平均的な新聞」というくらいの評価なのです。
この社説は敗戦日社説としても甘すぎで、全面的に書き直してほしいです。書き直すなら、最低限入れるポイントは次の点でしょう。
一つ。大日本帝国がアジア諸国とアジア諸国民に対して加えた蛮行や加害に具体的に言及し、真摯な反省を表明すること。
二つ。「岸田政権も敵基地攻撃能力の保持を狙っており、『専守防衛』というわが国平和主義の根幹も骨抜きにされかけています」という部分を具体的に越明するために、自民党政治の内容を振り返る。それが違憲であるだけでなく、現実的にも愚策であることを説明する。自民党政治が続く限り平和主義は壊されるだけであり、本当の平和主義を貫くなら、自民党では無理であり、政権交代しないと無理であると述べる。
三つ。前半部分は全部カット。
批判だけでなく、対案も出しました。東京新聞さん、改善いただきたくよろしくお願いいたします。

●国会議員への投書のための「議員一覧ポータルサイト」 (1)→
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http://muranoserena.blog91.fc2.ewkefc国会前で #入管法改悪に反対 した5500人(2023年6月5日)No titleでも
5500人の方々が集まってくださったことは、一筋の光明だと思います。
地方在住でパニック発作もあり、なかなかデモには参加できないのですが、地方からもできるだ津木野宇佐儀「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」はずなのに拷問を行なう入管は憲法違反。解体・廃止が妥当。No title全くそうですね。
戦後の長年の保守政権、その流れをくむ自民の憲法軽視(アベ以降は憲法無視!)が、戦前からの「拷問及び残虐な刑罰」的体質を矯正するどころか、許し続け津木野宇佐儀「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」はずなのに拷問を行なう入管は憲法違反。解体・廃止が妥当。No title もともと入管当局というのは特別高等警察の残滓みたいな組織でした。周知のように特高とは大日本帝国の暗黒面を代表するような組織であり、多くの人々を拷問にかけ痛めつクテシフォンまた核発電所大規模事故を招くもとになる可能性のある原発回帰推進法の自国維公による可決に抗議する原発回帰推進法の可決に強く抗議する選挙で信を問うこともなくGX脱炭素電源法が政府与党とその補完勢力である維国の賛成で可決されました。
GX脱炭素電源法とは名ばかりその実は原発回帰推進法そのもので閉口#入管法改悪に反対 #法務大臣の問責決議を #法務大臣の解任を #改悪入管法の強行採決反対 つまり、国際的に当たり前の人権政策を日本政府に求めているだけです。#改悪入管法の強行採決反対入管法改悪をめぐって政府与党の問題が次々と明るみに出ています。
難民審査「1年半で500件」は可能なのか、不可能なのかについて齋藤法相は答弁を180度転換、ただただ閉口閉口#入管法改悪に反対 #法務大臣の問責決議を #法務大臣の解任を #改悪入管法の強行採決反対 つまり、国際的に当たり前の人権政策を日本政府に求めているだけです。No title立憲は、「てめえを踏みつけている奴らに媚び売ってどうすんだ」というのを何度も思います。
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主張する事は、常に自分達特権階級の擁護ばっかり。
庶民が、病院でマイナカードの不具合で受診できまいがお構い無しで、不具合隠K.Mina相模原市の障がい者虐殺事件の容疑者が釈放されてニュースキャスター長谷川豊の名でネットメディアで「透析患者を殺してもよい」と言っているのかと思った。精神障害者である自分を肯定する人もいる。 昔は精神分裂病と言われた統合失調症は100人に1人がかかるごく一般的な疾患なのだそうです。日本の人口が1億2000万人であれば120万人が罹患していることになります。発祥Takeshi自国維公が国民の医療アクセスの命綱を切る作業を本格化させた2023年6月2日。民主主義者にとって自国維公に殴られ始める屈辱の日。 #保険証廃止法案の成立に抗議しますNo title>ブログ主様
>まだまだ闘わなければ日本の民主化は成し遂げられません。あきらめた時が負けです。
>決して腐ることなく、戦い抜きましょうと、多くの人に呼びかけ津木野宇佐儀自国維公が国民の医療アクセスの命綱を切る作業を本格化させた2023年6月2日。民主主義者にとって自国維公に殴られ始める屈辱の日。 #保険証廃止法案の成立に抗議します私はマイナンバーカードを持ちません。 私もマイナンバーカード取得強制に反対でコメントを2日前から投稿したのですが,F2ブログからはねられていました。よくあることですが。
私のもとには過去に市役所Takeshi問題なく使われている現行健康保険証廃止は自国維公(地獄行こう)から日本国民への暴力的攻撃。抗議と反対を続ける。 #保険証廃止法案の採決に抗議します まだまだ使えて誰も不便に思ってない道路をわざわざぶっ壊して新しい道路を作るようなことは東日本大震災の被災地ではよく見る光景です。復興という錦の御旗があれば無駄左の人問題なく使われている現行健康保険証廃止は自国維公(地獄行こう)から日本国民への暴力的攻撃。抗議と反対を続ける。 #保険証廃止法案の採決に抗議します朝日の劣化ここ数日で「朝日は滅びろ」というのが強くなりました。
成果が疑わしいG7の報道でも「何を食った」とどうでもいいことをやっていて「核軍縮」の退行を流しもしない。
最アンドリュー・バルトフェルド首相公邸で遊ぶ岸田文雄一族。 (2)くだらん擁護が悪目立ち青瓦台で同じことがあれば、トチ狂ったように連日報道業者が喚き散らします、絶対に。
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私が長野県中野市で起きた,立て籠もり・刺殺銃殺事件で連想したのはひとつはキム・ヒロ事件でした。朝鮮人を差別Takeshi#奪マスク #脱マスク を他人に強制しようとするな。徹底的に抵抗する。No title「脱マスク」(日本は着けるも外すも任意!なのに!)のせいなのか、インフルエンザ、はしか等が流行ってますね津木野宇佐儀石垣島への陸上自衛隊配備について住民投票を求める規定数以上の署名を集めたのに住民投票実施を行政からも司法からも却下された異常事態No title沖縄だけでなく日本もアメリカの支配下っていうことが多くの「日本人」にはわかっていないのだろうな…
2年ほど前、私の住む街の上空を、オスプレイが2度(3度も?)飛津木野宇佐儀死刑FAQ (適宜更新)Re: ノルウェー政府庁舎爆発及びウトヤ島での銃乱射事件Takeshiさん、いつもコメントありがとうございます。当時のことを思い出すために、ここに私の当時のメモを記録します。
テロの犠牲になった悲しみのノルウェーの民主社会村野瀬 玲奈首相公邸で遊ぶ岸田文雄一族。岸田翔太郎が首相秘書官を辞職 岸田翔太郎が2023年6月1日付けで辞職するとのこと。6月1日付けというのは,ボーナスを全額もらうためでしょうか。岸田首相自分自身は責任をとらないのでしょうか。馬鹿息Takeshi死刑FAQ (適宜更新)戦争と死刑の間にあるもの 人は人を殺してはいけない。
個人が故意をもって他の個人を殺害すれば違法であり,死刑に処せられるというのが過去から現在に至るまでの世界的なルールです。現在は死Takeshi首相公邸で遊ぶ岸田文雄一族。岸田翔太郎はどこまでウダイに近づくのか。 独裁者の馬鹿息子としてウダイ・サッダーム・フセイン(1964.6.18~2003.7.22)が有名です。サッダームの長男として生まれてから、両親に甘やかされて育てられたと言われTakeshi死刑FAQ (適宜更新)ノルウェー政府庁舎爆発及びウトヤ島での銃乱射事件2011年7月22日,アンネシュ・ブレイビクは,、オスロ中心地にある政府庁舎を爆破し8人の命を奪った後,ウトヤ島で労働党の青年部の関係者69人を銃で殺害しました。単独犯行Takeshi立法根拠が無い #入管法改悪反対 。No title事実上難民を受け入れないのは条約違反=憲法98条違反なんですが
岸田はこの愚行で何を守ろうとしてるんですかね…津木野宇佐儀(「月乃兎」改め)