東京新聞 @tokyonewsroom @tokyo_shimbun @tokyoseijibu の都知事選報道に疑問。東京新聞労働組合 @danketsu_rentai さん、改善を。

　　

2021年にある選挙のうち、最も重要なものの一つが東京都議会選です。あと、衆議院議員選挙もありますが、それはまた追い追い取り上げることになります。

都議会選についての報道の一つについて、良い報道の仕方かどうか検討してみます。東京都といえば一部の人たちに高く評価されている東京新聞がいいでしょう。グーグル検索をかけると、これがあります。ホットなトピックの五輪をめぐる選挙公約についてなので、ちょうどよいですね。これを題材に、検討し批評してみます。まず全文読みましょう。ほぼ全編にわたってツッコミを入れますので、全文を転載いたします。各党の五輪に関する公約の要旨を表にしたものがありますが、それは転載しないので、リンク先でごらんください。

●東京新聞 TOKYO Web
五輪「全面推進」は公約に掲げず　都議選で目立つ主要政党の慎重姿勢　
https://www.tokyo-np.co.jp/article/111747
2021年6月21日 05時50分

　東京都議選（２５日告示、７月４日投開票）に向けて、主要政党の公約が出そろった。東京五輪・パラリンピック大会については、新型コロナウイルスの感染状況や根強い開催反対の世論を背景に、全面的に推進を掲げる党はない。慎重な表現が目立っている。（松尾博史）

　最大会派の地域政党「都民ファーストの会」は「国が有観客での開催を強行する場合、最低でも無観客での開催を強く求める」と主張し、感染状況次第では再延期も求めるとする。同会特別顧問でもある小池百合子知事は開催準備を進める立場だが、荒木千陽代表は１５日の会見で「さまざまな意見交換をしている」としている。

　政権与党で都議選で協力関係にある自民、公明両党は公約に盛り込んでいない。都議会自民党の山崎一輝幹事長は８日に会見し「中止、延期は考えていない」としつつ「観客をどうするか総合的な判断」と述べた。

　都議会公明党は開催を目指す立場ながら、東村邦浩幹事長が７日の会見で「徹底した感染防止策を実施し、国や組織委が判断し、都民にしっかり説明するべきだ」とした。

　一方、共産党は重点公約で「ただちに中止を決断し、コロナ対策に全力集中を」と明記。立憲民主党は「感染拡大の懸念を払拭ふっしょくできない限り、延期か中止」と訴える。地域政党の東京・生活者ネットワークは公約には盛り込んでいないが、「一日も早く中止の決断を政府と都に求める」との声明を出している。

　日本維新の会は「感染状況など客観的指標で判断」と条件付き賛成。国民民主党は公約には入れず、１７日の会見で都連役員が「延期という立場は変わらないが、現在は政府が開催に向けて動いている。都議選で延期を掲げるのは無責任」と説明した。

（転載ここまで）

では、検討とツッコミを始めます。

[引用開始]
「東京都議選（２５日告示、７月４日投開票）に向けて、主要政党の公約が出そろった。東京五輪・パラリンピック大会については、新型コロナウイルスの感染状況や根強い開催反対の世論を背景に、全面的に推進を掲げる党はない。慎重な表現が目立っている。（松尾博史）」
[引用中断]

まず、記事の見出しとこのリード文にいきなり問題があります。「全面的に推進を掲げる党はない。慎重な表現が目立っている」と各党の公約を総覧しているのですが、誤解を誘うまとめ方ではないでしょうか。中止か何らかの形の開催かで分けると、党による違いははっきりしています。公約の表現が慎重であっても、五輪推進の意思があるなら、現実的にみて、それは推進をかかげる公約と解釈すべきです。はっきりと中止をうたわない公約は基本的に「推進」です。東京新聞のリード文では、全面的に推進を掲げる党はないとすることによって、推進派の本音を隠すことになっています。感心できないまとめ方だと考えます。そのことを以下に説明していきます。

[引用再開]
最大会派の地域政党「都民ファーストの会」は「国が有観客での開催を強行する場合、最低でも無観客での開催を強く求める」と主張し、感染状況次第では再延期も求めるとする。同会特別顧問でもある小池百合子知事は開催準備を進める立場だが、荒木千陽代表は１５日の会見で「さまざまな意見交換をしている」としている。
[引用中断]

都民ファーストの会（以下、私の文では「都ファ」）の五輪への姿勢は次の記事で批判しました。

■東京都民の世論を踏みつぶす、ブレーキのない自公都ファの五輪ブルドーザー
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-7954.html
2021/05/28 23:00

五輪反対の声が優勢であるにもかかわらず、「都民ファースト」を名乗る会派が五輪に反対せず、五輪反対の声をつぶすなら、都ファは明らかに五輪推進です。慎重姿勢ではありません。「国が有観客での開催を強行する場合、最低でも無観客での開催を強く求める」というのが都ファの公約だそうですが、国（日本政府）は主催者ではないとスガ首相が言っていましたね。国を主催者とカウントするのがまず変ですが、それはおいておいて、公約が「最低でも無観客での開催を強く求める」だというのは、「無観客での開催」を公約しているのではなくて、「それを強く求める」ことを公約しているにすぎません。つまり、「強く求め」るふりをしたとしても、国が有観客での開催を強行したら、抵抗するふりだけして有観客開催をあっさり受け入れてしまう可能性が高いことに注目すべきです。

考えてもみましょう。都ファは現在、都議会での最大会派です。本気で無観客開催を主張するなら、都議会選を待たずに今無観客開催のために強く動くべきなのに、都ファはそう動いているでしょうか？今そう動いているという都ファの動向があるでしょうか。私の探し方が悪いのか、そういう報道は見ません。これは、都ファの本音は国と同じく、有観客での開催であると読み取るべき、あるいは、少なくとも、そう疑うべきであるということです。

公約の表面だけ見ていてはダメです。

[引用再開]
政権与党で都議選で協力関係にある自民、公明両党は公約に盛り込んでいない。都議会自民党の山崎一輝幹事長は８日に会見し「中止、延期は考えていない」としつつ「観客をどうするか総合的な判断」と述べた。
「i引用中断]

公約に盛り込まれていないからと、記事の見出しとリード文で「目立つ主要政党の慎重姿勢」とまとめるのではなく、自公の現実の行動を見るべきです。現実に、自公は五輪を強行しています。「観客をどうするか総合的な判断」なんてどうとでも解釈できる言葉を引用する意味があるでしょうか。自公ははっきりとした五輪推進派、「慎重姿勢」などでは決してありません。

[引用再開]
都議会公明党は開催を目指す立場ながら、東村邦浩幹事長が７日の会見で「徹底した感染防止策を実施し、国や組織委が判断し、都民にしっかり説明するべきだ」とした。
[引用中断]

実際に徹底した感染防止策は実施されているとはとてもいえません。ウガンダ選手団日本到着の時のザル防疫がその証明です。

■日本の穴だらけのザル防疫。日本発のコロナパンデミック拡大が現実味を帯びてきた。非常にまずい。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-8012.html
2021/06/20 17:00

公明は国政で与党の立場にいますが、感染防止先も徹底する意思がまるでないかのようなザル対応を改善しようとしているでしょうか。していないでしょう。公明の国会議員と公明の都議会議員は連携できるはずですが、ザル対応が現実である以上、「国や組織委が判断し、都民にしっかり説明するべきだ」という言葉は全くむなしく、中身がありません。こんなものは無意味だとは東京新聞は思わないのでしょうか。

ここまでは、感染対策も穴だらけのザルのまま有観客で五輪を強行しようという会派です。現実がそのことを示しています。公約の字面ではなく、各党派の行動という現実を見なければなりません。公約はその現実をごまかすための飾りです。「五輪『全面推進』は公約に掲げず」という見出しやリード文は現実に合っていない、非常に不適切なまとめ方だと言えます。


[引用再開]
一方、共産党は重点公約で「ただちに中止を決断し、コロナ対策に全力集中を」と明記。立憲民主党は「感染拡大の懸念を払拭ふっしょくできない限り、延期か中止」と訴える。地域政党の東京・生活者ネットワークは公約には盛り込んでいないが、「一日も早く中止の決断を政府と都に求める」との声明を出している。
[引用中断]

五輪について真に慎重な立場とは日本共産党や東京・生活者ネットワークのこのような立場をいいます。立憲民主党は「感染拡大の懸念を払拭ふっしょくできない限り」と言っているので少し弱いですが、それでも中止・延期を主張する「慎重派」です。五輪に反対する有権者、コロナ対策に集中してほしい有権者はこれらの党派に投票しなければ意思表示になりません。「都議選で目立つ主要政党の慎重姿勢」という見出しを見て、都ファを五輪慎重派だと勘違いして投票してしまう五輪反対の都民がいないことを祈るばかりです。

[引用再開]
　日本維新の会は「感染状況など客観的指標で判断」と条件付き賛成。国民民主党は公約には入れず、１７日の会見で都連役員が「延期という立場は変わらないが、現在は政府が開催に向けて動いている。都議選で延期を掲げるのは無責任」と説明した。
[引用中断]

維新も条件をつけるふりをしていますが、はっきりと五輪推進派です。維新のかかげる客観的指標とは何かはっきりしないので、現実的には無意味な条件です。

さらに付け加えれば、大阪の維新の人たちのコロナ禍における振る舞いや言動を見れば、維新の言うことを好意的に解釈するのはあまりにもおめでたい態度であるということがわかります。維新についてそのような予備知識なしに公約を紹介しているとしたら、新聞記者としてあまりにも素人すぎだと思います。

民民もこの発言を見るにはっきりと五輪推進派です。

以上のように公約と現実を分析すれば、東京新聞のこの記事が不適切であることは私の目には明らかです。五輪推進か五輪中止・慎重かは党派・会派によってはっきりと分かれています。「五輪『全面推進』は公約に掲げず」とまとめるべきものではありません。

なんでこんなぬるいピントの外れた記事になるのでしょうか。記者の力量が足りないから、政治の現実についての記者の知識が不足しているからというのが説明の一つです。あるいは、記者が都ファ、自民、公明、維新に甘いからという可能性もあります。しかし、もう一つの説明が考えられます。それは、東京新聞は都議会選で有権者が五輪反対の意思表示を票にこめないように誘導したいからではないか、東京都の有権者が各党派の政治姿勢について十分に理解しないままでいてもらいたいと考えているのではないか、というものです。そうでなければ、共産と自民の姿勢の違いを「五輪『全面推進』は公約に掲げず」なんてごまかさないと思うのです。


今回俎上にのせた東京新聞のこの記事、とてもほめることはできません。疑問だらけです。批判すべき点ばかりです。ツイッターでは東京新聞労働組合 @danketsu_rentai のアカウントが自社の報道姿勢や経営姿勢にかなりきびしいツッコミを入れているので、東京新聞労働組合 @danketsu_rentai さんが少しでも東京新聞のこのダメさを改善してくれないでしょうか。


ものすごいきびしい記事になりましたが、有権者をミスリードしない記事、表面的な言葉ではなくて政治の現状を見抜く記事、有権者にとって意味のある記事を出してほしいと望むからです。マスメディアの記事がダメなら、有権者の意思表示もダメなものになると思うからです。

東京新聞を高く評価している人たちも、無条件に評価せず、批判的に読むようにしてほしいです。



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