2018年3月1日、韓国・ムンジェイン（文在寅）大統領の「3.1節記念演説」

　　

韓国で3月1日というのは特別な意味を持っています。日本による植民地支配に抵抗して、1919年3月1日に韓国で起きた三・一独立運動の記念日だからです。

そのことを謙虚に学び、記憶するためのメモです。

この三・一運動が「大韓民国を国民が主人である民主共和国に」したという認識を、ムンジェイン（文在寅）大統領は2018年3月1日の記念式典での演説で示しました。以下の報道を読みましょう。

●hankyoreh japan
文大統領「臨時政府が建国のルーツ」と宣言…「歴史の主流に据える」
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/29919.html
登録:2018-03-02 06:14 修正:2018-03-02 08:16

　文在寅(ムン・ジェイン)大統領が1日、99周年三・一節記念式典での演説で「大韓民国を国民が主人である民主共和国にしたのが、まさに三・一運動」であり、「三・一運動の最も大きな成果は、独立宣言書による大韓民国臨時政府の樹立」としたうえで、大韓民国の「ルーツ」が三・一運動で樹立された大韓民国臨時政府にあることを明確にした。文大統領は「三・一運動の精神と独立運動家らの生活を大韓民国の歴史の主流に据える」とし、自主と平和を望む市民が民主共和国の主人であることを明らかにした。
（後略）

（引用ここまで）

「三・一運動の精神と独立運動家らの生活を大韓民国の歴史の主流に据える」という韓国大統領の宣言に匹敵する内容を現在の日本国と日本人が高らかに言えるかというと、そうは言えないように思います。

民主主義を希求する気合いにおいて日本は韓国に大きく引き離されていると思いました。今からでも日本国と日本人は韓国に追いつこうとすることができるでしょうか？私は楽観的にはなれませんが、私一人でも民主主義を誠実に希求しますし、一人でも多くの日本人がそう思うことが日本の政治や社会が少しでもましになるための第一歩だと改めて思います。

以下に、ムンジェイン（文在寅）大統領の演説の全文が日本語に訳されています。断片的で大日本帝国史観のバイアスのかかりがちな日本での報道などを読むよりも、この演説の全文訳を読んで、韓国の歴史を理解すべきです。

翻訳してくださった方ありがとうございます。
【全文和訳】文在寅大統領「3.1節記念演説」2018.3.1https://t.co/opZVjNXpnJ

— 永添泰子（歴史を直視し過去と対決を） (@packraty) March 3, 2018

●【全文和訳】文在寅大統領「3.1節記念演説」2018.3.1
https://choshinko-no-tatakai-enzetsu.jimdo.com/

演説の韓国語原文はこちら。

●대한민국 청와대
제99주년 3.1절 기념사
http://www1.president.go.kr/articles/2461
2018-03-01

演説の動画はこちら。式典全体を収録しているものをリンクします。

●YouTube
"3·1운동·건국 100주년이 평화체제 구축 출발선" - 문재인 대통령 제99주년 3.1절 기념사
https://www.youtube.com/watch?v=1RDUNEaGBSU

大統領演説は、28分40秒のところから、43分30秒のところまでです。

この演説についての論評や解説もあります。

●徐台教 - 個人 - Yahoo!ニュース
「日本は歴史を直視」「2045年に共同体完成」…文在寅大統領の3.1節演説を読み解く（全文訳付）
徐台教 | ソウル在住ジャーナリスト。「コリアン・ポリティクス」編集長
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180301-00082230/
2018/3/1(木) 21:26

●誰かの妄想・はてなブログ版
韓国が日本の植民地支配から独立して成立した国であることを踏まえて全体を読んだ方が良いと思う
http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/03/02/113000
2018/03/02

この演説から、私が心を打たれた部分をいくつか引用するなら、次の部分です。（引用部は二重鍵括弧で示します。）

『1人が倒れると10人が立ち上がりました。安重根（アン・ジュングン）義士の後に続き、姜宇奎（カン・ウギュ）、パク・ジェヒョク、チェ・スボン、金益相（キム・イクサン）、金相玉（キム・サンオク）、羅錫疇（ナ・ソクジュ）、李奉昌（イ・ボンチャン）、到底数え上げられないほどの義士が義烈闘争を続けました。』

『夜を明かして太極旗を描いた釜山日新女学校の生徒たち、最初の女性義兵長、ユン・ヒスン義士、白凡・金九（キム・グ）先生の剛直な母、クァク・ナグォン女史、3.1運動直後の3月9日、46歳の年に鴨緑江を渡って西路軍政署に加わった独立軍の母、ナム・ジャヒョン女史、槿友会事件を主導した後、中国に亡命して義烈団の活動をしたパク・チャジョン烈士、大韓民国臨時政府の独立資金を調達するために国境を6回も行き来したチョン・ジョンファ義士、私達には3.1運動の精神をもって大韓民国を打ち建てた建国の母たちもいました。』

『昨年の冬、私達は100年という時間を超越しました。3.1運動で始まった国民主権の歴史を蘇らせました。1700万個のろうそくが最も平和的で美しい方法で、この歴史を繰り広げました。闇を明るく照らした一つ一つの光は、国民一人一人が大韓民国の主権者であることをもう一度宣言しました。 新しい国民主権の歴史が、大韓民国建国100周年に向けて再び刻まれ始めました。私と私達の政府は、ろうそくが再び照らしてくれた国民主権の国を断固として守っていきます。3.1運動の精神と独立運動家の生を大韓民国の歴史の主流に打ち建てていきます。2020年にオープンする大韓民国臨時政府記念館には、大韓民国を樹立したおびただしい先祖の物語が盛り込まれるでしょう。3.1運動に参加した木こりも、鉱夫も、妓生も、誇らしい独立運動家の名によって刻まれるでしょう。』

『慰安婦問題の解決においても、加害者である日本政府が「終わった」と言ってはなりません。戦時中にあった反人倫的な人権犯罪行為は、終わったという言葉で覆われることはありません。不幸な歴史ほどその歴史を記憶し、その歴史から学ぶことだけが真の解決です。日本は人類普遍の良心をもって歴史の真実と正義に向き合わなければなりません。私は日本が、苦痛を与えた近隣の国々と真に和解し、平和共存と繁栄の道を共に歩んでいくことを願います。私は、日本に特別な待遇を求めません。ただ、最も近い隣国らしく、真実の反省と和解の上に共に未来へと進んでいくことを願うだけです。』

（引用ここまで）


引用はこれくらいにしますが、韓国の歴史を振り返るこの演説を読んで私が悲しみとともに思い出すことがあります。それは、日本でも明治憲法時代、大日本帝国時代、日中戦争時代、第二次大戦時代に戦争に反対し、民主主義を希求したために日本政府に弾圧され、迫害された多数の人々が歴代自民党政府の代表者によってこのように具体的に敬意とともに讃えられたことはほとんどないという事実です。逆に、日本で権力者によって讃えられるのは、むしろ民主主義や反戦を弾圧する側なのです。あるいは、国家主義と結びついている「明治維新」なのです。そのことを悲しいことだと思う日本人がどれだけいるでしょうか。

この大統領演説で触れられている韓国の闘士たちや無名の一般人たちに匹敵する日本人を日本国が讃えないことについて私の怒りは静かですが強いです。それは、日本国が民主主義国であるとはいえない証拠の一つであると私は考えています。

この大統領演説にも示されている韓国と韓国民の民主主義希求の文字通り血のにじむ過去と現在の努力に私は心からの敬意を表します。自力で民主化の道を歩む韓国と韓国民を見習って日本国を民主化を希求し続けます。

そして、その韓国の努力に水を差す日本国と（全員とは言いませんがかなりの部分の）日本人政治家や一般人の言動や行為について、怒りと悲しみをもって私はこれからも見続けていくでしょう。

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