安倍首相が米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に一方的に好意的なコメント付きで選ばれたことに驚いた。

　　

『安倍首相、米タイム誌に「登場」』という記事で安倍首相についての特集記事がカバーストーリーとして米タイム誌に載ったことをメモしました。

そして、今度は、同誌毎年恒例の「世界で最も影響力のある100人」に安倍首相も選ばれました。しかも、かなり好意的コメント付きだったので、悪い意味で驚きました。「影響力」とは良い影響力もあれば悪い影響力もあります。また、今はまだ決定的な評価は保留にするが場合によっては良い影響力を与えるかもしれないが場合によっては悪い影響力を与えるかもしれない、そういう人物もいます。しかし、安倍のある政策の一面を「評価」するとしても、安倍にはたいへんに多くの問題点があることを無視することはできません。

実際に、タイム誌、というか、コメントを寄せたジャック・ルー財務長官が、安倍首相とその手下たちの反民主的体質、独裁的体質、歴史修正主義的思想、大日本帝国史観肯定思想などの、日本と世界にとって有害な体質に一切触れずに好意的にばかり語ったことに私は深く失望しました。ジャック・ルー財務長官の認識の問題でもあり、タイム誌の編集方針の問題でもあるでしょう。別の言葉で言えば、ここにタイム誌の限界を見ました。そして、タイム誌は「民主主義」とは何かを理解していないようだとも思いました。

女性や子どもが教育を受ける権利を訴えているパキスタンのマララ・ユスフザイさんを取り上げたくらいでは、あるいは、チリの新しい女性大統領、ミチェレ・バチェレ氏を選んだくらいでは、安倍を好意的に取り上げた悪は消えません。

タイム誌が選んだ100人は次のリンク先から見ることができます。

●TIME
TIME 100 The Most Influential People in the World in 2014
http://time.com/time100-2014/

日本では安倍自民党に近い報道業者や洗脳機関が喜んでいるように見えます。

●NHKニュース
「影響力ある１００人」に安倍首相
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140425/k10014016301000.html
2014年4月25日 8時28分

アメリカの週刊誌「タイム」が選んだ、ことしの「世界で最も影響力のある１００人」が発表され、日本人としては「指導者部門」で安倍総理大臣が選ばれました。

「タイム」は２００４年から毎年この時期に、「世界で最も影響力のある１００人」として、世界の指導者や芸術家などを独自に選んで掲載しています。
このほど、ことしの１００人がまず電子版で発表され、このうち「指導者部門」に安倍総理大臣が選ばれました。
安倍総理大臣については、アメリカのジャック・ルー財務長官が紹介文を掲載し、アベノミクスを引き合いに「アジアの大胆な改革者」としています。
そのうえで、「日本が経済の復活を果たすと世界に示したいなら、安倍氏を総理大臣に選んだのは最善の方法だったかもしれない」と評価しています。
また、アメリカからはオバマ大統領のほか、２年後の大統領選挙への立候補が取り沙汰されているヒラリー・クリントン氏も選ばれ、女性や子どもが教育を受ける権利を訴えているパキスタンのマララ・ユスフザイさんが「世界の女性にとって強さの象徴」として紹介しています。
このほか、北朝鮮のキム・ジョンウン第１書記が４年連続で選ばれ、貧困にあえぐ国民に向き合わなければ国民の不満が限界に達し体制崩壊につながりかねないと説明されています。

（転載ここまで）

いえ、日本の経済の復活はたぶん果たされませんから。貧富の格差が高まり、民主主義は縮小されて政治の誤りや暴走を抑える機会がどんどん減り、アメリカからのTPP押し付けによっても日本の力は弱められるでしょう。そういう結果がはっきりしたところで、このジャック・ルー財務長官はどんなコメントを出すんでしょうね。

●読売新聞（YOMIURI ONLINE）
タイム誌「影響力ある１００人」に安倍首相
http://www.yomiuri.co.jp/world/20140425-OYT1T50060.html
2014年04月25日 12時19分

　【ニューヨーク＝加藤賢治】米誌タイムは２４日、毎年恒例の「世界で最も影響力がある１００人」を発表し、日本からは安倍首相が選ばれた。

　ルー米財務長官が「アジアの大胆な改革者」と題した選評を寄稿し、首相の経済政策「アベノミクス」により、「持続的な景気回復が近いと日本人が信じるようになった」などと指摘した。

　「指導者」部門では、首相のほか、オバマ米大統領や中国の習近平シージンピン国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩キムジョンウン第１書記らが入った。

　「１００人」の特集記事は２００４年に始まり、女性は今回、最多の４１人となった。ヒラリー・クリントン前米国務長官や米人気歌手ビヨンセさんらが選ばれた。

（転載ここまで）

たとえば、ロシアのプーチン大統領へのコメントは批判的なものになっています。まあ妥当なところだと思います。中国の習近平国家主席についてのコメントでは「大国」中国のリーダーとしての課題に言及されていますが手放しで持ち上げているわけではありません。朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の金正恩（キム・ジョンウン）最高指導者については言うまでもありません。

ならば、東アジアの安定を自ら乱す安倍へのコメントが期待を込めた好意的なものであるのは過大評価がすぎると思います。批判的視点が全くといっていいほどありませんから。

読売新聞では、マララ・ユスフザイさんへの言及はなしですか。興味深いですね。

なお、日本でこのタイム誌の記事を見て気づいた人がいるかどうかわかりませんが、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は選ばれているものの、フランスのフランソワ・オランド大統領は選ばれていません。ここにもオランド大統領の影響力の低下は見られますね...。

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