安倍晋三首相の国連演説での二枚舌に国際社会がだまされないことを心から祈ります

　　

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特に日本において、客観的に見て「右翼」に属する政治勢力や政治家が政権にある時、「私は右翼であることを誇りに思っている」という趣旨のことを表だって言わずに、「私は右翼ではない」とか、「私は右傾化していない」とか外に向かって言いたがる現象があります。

ここでは、「右翼」の特徴として、「個人の権利や尊厳より国家や統治機構の利益を優先する」、「基本的人権や国民主権や平和主義を縮小あるいは無効化の方向にもっていきたい欲望」、「軍事優先思考」をあげておきます。この特徴が多かれ少なかれ当てはまる政治家や政治勢力は右翼、場合によっては極右と普通に判定されると思います。

さて、「私は（我が国は）右傾化していない」と言いたがる人と政治勢力の実例をまずあげます。

●東京新聞(TOKYO Web)
集団的自衛権　改憲　東南アジア首脳に説明
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013072802000103.html
2013年7月28日 朝刊
 
　【マニラ＝共同】安倍晋三首相は二十七日、訪問先のマニラで記者会見し、憲法解釈で禁じているとされてきた集団的自衛権の行使容認に関し「検討を進めていく考えだ」と明言した。今回の訪問で会談した各国首脳らに説明し理解を求めたことも明らかにし、憲法改正についても「誤解がないよう丁寧に説明していきたい」と実現に意欲を見せた。冷え込んだ日中関係の改善に向け、対話再開も求めた。
　集団的自衛権などの説明は安倍政権の「右傾化」への懸念を自ら拭う狙いとみられる。ただ、参院選で抑えていた保守色をにわかに解禁したとも受け取られかねず、波紋を広げる可能性もある。
　首相は集団的自衛権行使の検討に加え、民主党政権時に策定された防衛大綱の見直し、外交・安全保障政策の司令塔となる日本版「国家安全保障会議（ＮＳＣ）」設置に取り組む考えも示し「他の国々が当然行い得るものの一部を日本でも可能にしようとするものだ」と、右傾化の指摘は当たらないとの認識を示した。
　会見に先立つフィリピンのアキノ大統領との会談で、集団的自衛権について「国際的な安全保障環境の変化を踏まえ、日本の安全を確保し、日米同盟、地域の平和と安定に貢献していくという観点から検討を進めている」と伝えた。二十六日のシンガポール首相との会談でも改憲や集団的自衛権について伝達した。
　会見では憲法改正に関し「平和主義、国民主権、基本的人権を当然の前提とし、現在の日本にふさわしい憲法の在り方について議論を深めている」と説明した。
　沖縄県・尖閣諸島をめぐり対立が続く日中関係について「外交当局間の対話を進めるよう指示している。お互いに胸襟を開いて話をすることが大切だ」と、途絶えた首脳会談の早期再開を訴えた。韓国に対し「首脳会談ができることを楽しみにしている」と呼び掛けた。

（転載ここまで）

この記事で描写されているのは、自民党という政治勢力の欲望にしたがった政治行動を行なうと右傾化と外部からは思われるという意識が自民党政府にあるということと、右傾化と外国から思われたらまずいという意識が自民党政府にはあるという光景です。

そして、実際には自民党が平和主義、国民主権、基本的人権を縮小、無効化、廃止する準備を着実にすすめているのに、外部に向かっては「平和主義、国民主権、基本的人権を当然の前提」とするなどと正反対のことを話してしまうというのも、「平和主義、国民主権、基本的人権を縮小、無効化、廃止する」ことが本来は許されないことを知っているのに、その許されないことを自分が今しようとしていることを他国から悟られたくないという意識が自民党政府にあるという光景です。

平和主義、国民主権、基本的人権の縮小、無効化、廃止を正しいことだと思っているのなら、「日本は平和主義、国民主権、基本的人権を縮小、無効化、廃止する準備をすすめている」と胸をはって外国に向かって言えばいいのに、そうは言わない自民党政府。

これは「右翼政権二枚舌現象」とでも呼べるでしょうか。「右傾化している」と他者から思われることをこのように気にするという人や政治勢力の心理は、「私は右翼ではない」と自称する者たちは「右翼とは体面が悪い存在だ」、「右翼と他人から思われることはまずい」などと思っていることを間接的に証明しています。

実際、日本の自民党政府は、「極右化しながら極右化したとみられないようにする」、「ナチス化しながらナチス化したとみられないようにする」、「民主主義や人権思想を捨てながら民主主義や人権思想を捨てたと他者から見られないようにする」という、人をだますための政治課題に全力を尽くして立ち向かっているように見えます。

現在の東電福島第一原発の深刻な状況や放射能汚染水のだだ漏れ状態について現実とは全然違っている嘘を国際オリンピック総会でついた安倍晋三首相の行動とも相通じるものがあります。また、従軍慰安婦の件について自分の信条と正反対の内容の釈明を外国に対して行って恥じない橋下徹・大阪市長の行動とも相通じるものがあります。

そのように、対内的な行動と対外的な発言が正反対である政治勢力の政策や政治行動はダメであり危険であると断言して差し支えありません。安倍首相が2013年9月24日から始まる国連総会で行なうという女性の人権でのアピールを含むという演説の内容が自民党経由で一部事前に報道されていますが、その報道の一つを批判的に読んでみましょう。もちろん、安倍首相の本番の演説もそういう批判的視点で見る必要があります。

●ハフィントンポスト - ニュース速報まとめと、有識者と個人をつなぐソーシャルニュース（ハフポスト、ハフポ）
安倍首相、国連総会で慰安婦イメージ払拭狙う＝新しい日本の「女性観」を示せるか【争点：国際社会における日本】
http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/23/shinzo_abe_n_3977390.html?utm_hp_ref=japan
The Huffington Post  |  投稿日: 2013年09月24日 08時26分 JST  |  更新: 2013年09月24日 08時42分 JST

（前略）
■国連総会で各国首脳はシリアに関する立場を表明、日本は「女性の人権」で独自アピール

（前略）
安倍首相が26日の演説の半分を「女性の人権」というテーマに充て、シリアに対する日本の立場を述べるという。演説では紛争下の性犯罪など具体例をあげながら改善策を訴えるとされており、MSN産経ニュースは安倍首相がこの演説で、これまで国際社会が抱いてきた日本に対するイメージを払拭しようとしているのではないかと分析する。
日本はこれまで、元慰安婦に「償い金」を支給した「アジア女性基金」など、過去の清算に取り組んできたものの、そうした努力への国際社会の認知度は低い。外務省幹部は「人権に絡む国際会議では慰安婦問題ばかりが注目され、欧米から白い目で見られることも多い」との現状がある。
（中略）

安倍首相は出発に先立ち、23日羽田空港で記者団に対し、「国連総会の演説を通じて日本の存在感をしっかりとアピールしたい」と話す。演説には、6月に示した成長戦略において、「女性が輝ける国」を目指すとしたことや、女性の積極的登用を掲げたこと、また、指導的地位に女性が占める割合を20年までに30％以上にするとした数値目標を掲げたことなどにも触れられるという。
23日にBS日テレの番組に出演した世耕弘成官房副長官は、国連総会で安倍首相が演説する内容と目的について、次のように話している。
「安倍首相はスピーチを通して日本という国は決して右傾化するつもりはないし、きちんと積極的平和主義という形で世界の平和に貢献していきたいと考えているし、歴史認識について色々言われているが、女性が最前線で活躍する社会に生まれ変わっているんだと、しっかり訴えかけていくというのが今回の国連での演説で重要なポイントになる」（日テレNEWS24「積極的平和主義の訴え重要～世耕官房副長官」より。2013/09/24 1:21）

慰安婦に関する日本国内での一部政治家の発言などについては、インターネットユーザーの間でも疑問視する声が上がっている。今回の安倍首相の国連総会の演説は、シリアに対する支援となり、また、日本のイメージを変えるきっかけとなれるのか。オリンピック招致決定時の演説に続き、国際社会で日本が評価を得られるかに期待が高まる。
なお、今回の訪問では、安倍首相は、カナダのオタワで24日にハーパー首相と会談。その後ニューヨークに移り、24日にフランスのオランド大統領、25日に国連の潘基文事務総長、26日にパキスタンのシャリフ首相と会談。その後、26日（現地時間）に国連総会での一般討論演説に臨む予定だ。ニューヨーク証券取引所での講演や、U2のボノさんとの会談なども予定している。

（引用ここまで）

安倍首相は女性の人権について語るのだそうですが、日本での男女平等度は国際社会では最低レベルであり、それを改善しようという動きは自民党政治の中には全くと言っていいほど見られないことにハフィントンポスト日本版は触れるべきでしょう。

参考記事いくつか。
■2012年、日本の男女格差は相変わらず大きいまま
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3854.html
2012-10-27

■英BBC：「働く母親の環境が最低の日本」
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-4308.html
2013-05-02

それから、「慰安婦に関する日本国内での一部政治家の発言などについては、インターネットユーザーの間でも疑問視する声が上がっている」という一文では全く足りません。従軍慰安婦問題の現在の日本の責任についても、日本は国連やいくつかの国から勧告や非難決議を受けていることを国際社会は知っているはずですから、そのことにも当然触れるべきですが、触れていません。

「オリンピック招致決定時の演説に続き、国際社会で日本が評価を得られるかに期待が高まる」という一文についても、国際オリンピック委員会総会での「状況はコントロールされている」というあの嘘だらけの安倍演説について国際社会が日本を評価したと楽天的に解釈することに私は強く異議を唱えます。

参考記事の一つ。
■2020年東京オリンピックをきっかけに日本を国際的監視のもとに置こう。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-4734.html
2013-09-09

あれは国際オリンピック委員会という限定された目的の組織が特別な文脈で行なった判断であり、福一や汚染水の状況を科学的に精査しての判断ではないのです。安倍自民党政権が日本国内でやっている現実の政策や政治行動と、対外的に行なう演説の内容が正反対であるのに、「国際社会で日本が評価を得られるかに期待が高まる」とこの記事が書いているのは全くおかしな話です。

そもそも、安倍自民党政権は日本国内ではあらゆる分野で人権縮小無効化政策としか呼びようがないことをやっています。それに、繰り返しになりますが、安倍首相は国際オリンピック委員会総会で2020年オリンピックを東京に招致するIOC総会でのプレゼンの際に、福島第一原発と汚染水はコントロールできているという、事実と全く異なること（嘘とも言う）を平然と述べたので、彼が国連演説で言うことを信じようというのはあまりにも楽観的すぎる思考放棄の姿勢です。このハフィントンポスト日本版の記事からそのような視点や分析が抜けていることにただただ驚くばかりです。

右傾化するつもりはないと言いながら現実に右傾化している現在の日本の安倍政権の言うことをハフィントンポストはそんなにも信用したいのでしょうか。

各国の報道機関やジャーナリスト、そして、世界の「国家指導者業界」が、安倍（と自民党政治）のこの二枚舌にだまされないことを心から祈るばかりです。国際社会が安倍演説を本当にポジティブに「評価」してしまったら、安倍自民党政権が国際的にはますますいい顔をしながら日本国内では正反対の人権抑圧政策、つまり、平和主義、国民主権、基本的人権を縮小や無効化する政策をすすめることを強力に後押しする事態になります。そうすると、日本国民は安倍政権とIOCと「国家指導者業界」によって迫害されることに結果としてなってしまうのです。恐怖です。そうなることを私は心から心から憂えます。

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