「アラブメディアの一部」も橋下徹の主張を正しいとは全然言っていません。

　　

橋下徹・大阪市長が、戦時性奴隷制度と風俗についての橋下の発言を「正しいと言ってくれた」メディアを見つけてくれたと意気揚々と（？）ツイートしているのですが...。

arabnews.com/news/451980僕の発言は、日本のメディアでは総スカンだけど、アラブメディアの一部は正しいと言ってくれた。今からテレビ朝日報道スーションサンデーで真意を説明します。

— 橋下徹さん (@t_ishin) 2013年5月19日

■https://twitter.com/t_ishin/status/335914099236016128
arabnews.com/news/451980僕の発言は、日本のメディアでは総スカンだけど、アラブメディアの一部は正しいと言ってくれた。今からテレビ朝日報道スーションサンデーで真意を説明します。
— 橋下徹さん (@t_ishin) 2013年5月19日

で、以下の「ArabNews」の記事が橋下を正しいと言った記事だとのことですが、読めば分かるように、橋下が正しいなんて言っていません。自らも英語が読めず、取り巻きのスタッフにも英文を正しく読んで橋下に進言する者がいないような「英語名日本王政復古の会（自称日本維新の会）」が国際社会の中で的確な政治をできるわけがないという証明の一つとして記録しましょう。

このような愚かな橋下のツイートについては、「橋下徹向けには（私の批判の）手加減なんかしませんよ。英語力の問題。読解力を鍛えてください」と橋下徹に言いたいです。日本の多くのマスコミも、橋下のこういう発言についての読解力不足ぶりやでたらめぶりを指摘せずに橋下発言の宣伝だけをするのなら、存在価値はありません。そのような報道機関は、存在価値がないどころか、有害です。

では、橋下を正しいと言っているどころかきびしく批判的に報道している「ArabNews」の記事を。

●ArabNews
US troops abused women during occupation, says Japan mayor
http://www.arabnews.com/news/451980
AGENCE FRANCE PRESSE
Saturday 18 May 2013
Last Update 17 May 2013 10:23 pm

TOKYO: Osaka's abrasive mayor yesterday hit back at US criticism of his remarks on wartime sex slavery, claiming American troops abused Japanese women during their seven-year occupation.
Washington denounced as "outrageous" comments earlier this week by Toru Hashimoto, who said "comfort women" forced to provide sex to Japanese troops during World War II were a military necessity.
"Mayor Hashimoto's comments were outrageous and offensive," State Department spokeswoman Jen Psaki told reporters, urging Tokyo to work with its neighbors to address the past issue.
Up to 200,000 "comfort women" from Korea, China, the Philippines and elsewhere were forcibly drafted into brothels catering to the Japanese military during WWII, according to many mainstream historians.
But Hashimoto, whose quick tongue and forthright approach has won him friends and enemies in equal measure, hit back on Twitter.
"Let me go straight to the point. When America occupied Japan, didn't they make use of Japanese women?" Hashimoto Tweeted to his million followers.
"I can't help but point out that it is unfair for America to criticise only Japan by putting aside acts by its own country," said Hashimoto, who has been mentioned as a possible future prime minister.
"(The United States) should face what the US military did against local women, in particular Okinawan women when they occupied Japan," he added.
US-led Allied powers controlled Japan until 1952 following its surrender at the end of World War II.
The southern prefecture of Okinawa remained under US governance for another two decades before being returned to Tokyo.
Pulitzer Prize-winning historian John Dower is among credible sources who say American troops committed multiple rapes of Japanese women during the occupation and that press censorship muted reporting of these crimes.
Hashimoto also claimed that France and Germany were among countries that introduced wartime "comfort stations".
"It is a historical fact that the comfort station system was used during the Korean War and the Vietnam War," he Tweeted. He gave no details of this claim and did not say which side's soldiers used the brothels.
There is no mainstream evidence that modern militaries other than Japan's have employed a formal sex slavery system.
On Monday, Hashimoto prompted outrage at home and abroad by saying that soldiers living with the daily threat of death needed some way to let off steam and that this was provided by the comfort women system.
He said he believed the system was wrong and that former sex slaves deserved an apology.
The opinion that there is no proof of direct involvement in the sex slave system by the state or the imperial army is not uncommon on the right of Japanese politics.

（転載ここまで）

まず、冒頭に「Osaka's abrasive mayor」と書いてあります。「大阪の耳障りな市長」、「大阪の人をいらいらさせる市長」、「大阪の人心を逆なでする市長」、「大阪の不快な市長」という意味です。

それに、サイトはたしかに「ArabNews」だけど、もともとのニュース配信元はAFPですから、「アラブメディアの一部」というのだって正しくはないですね。

そして、記事の最後の方には、こう書いてあります。

Hashimoto also claimed that France and Germany were among countries that introduced wartime "comfort stations".
"It is a historical fact that the comfort station system was used during the Korean War and the Vietnam War," he Tweeted. He gave no details of this claim and did not say which side's soldiers used the brothels.
There is no mainstream evidence that modern militaries other than Japan's have employed a formal sex slavery system.

訳してみましょう。

『フランスとドイツは戦時慰安所を導入した国であるとも橋下は主張した。彼はまた、「朝鮮戦争とベトナム戦争の間に慰安所制度が用いられたのは歴史的事実だ」とツイートしている。しかし、この主張について彼は詳しい説明をしておらず、どちら側の兵士たちが娼館を使ったのかも言っていない。日本軍以外の現代の軍隊が公式の性奴隷制度を用いたという主流派の主張は存在しない。』

「他国軍にも慰安婦制度があったのになぜ日本だけが非難されるのか」という主張がコメント欄に現れると思いますので、あらかじめ説明をしておきましょう。

ナチスドイツ下での慰安所の状況について、ドイツ在住のジャーナリストの梶村太一郎さんの記事を紹介します。ナチスドイツでの「慰安所」も非道であることは100%確かですが、「ドイツだってやっていたんだから日本を非難するな」という主張は成り立ちません。それに、「日本だけが悪いわけじゃない」という主張は間接的に「日本も悪い」と認めているわけです。

そのうえで、あえて「日本も悪いが外国軍も悪い」という前提でその内情を比較してみると、日本の慰安婦制度が規模も手法も桁外れにひどかったことと、現在に至るまでも日本の国家としての反省が実質的にほとんどないということは他国とは比較にならないくらいに悪いと言うことができます。そのことは、ナチスドイツの非道さについての徹底した反省をしたドイツの戦後処理と日本の戦後処理を比べると、あまりにも明らかです。

では、梶村さんの記事です。全文はリンク先でどうぞ。

●明日うらしま　　在ベルリンジャーナリスト・梶村太一郎の反核覚え書き
１６２：橋下市長の「慰安婦必要」発言は強盗の居直り説教に等し／ナチスの強制売春施設研究の紹介
http://tkajimura.blogspot.jp/2013/05/blog-post_16.html
2013年5月16日木曜日

（前略）
　さて、本論ですが、橋下市長は「当時は世界中の軍隊が慰安所を利用したのに、日本だけが悪者にされるのはけしからん」とご立腹のご様子です。
第二次世界大戦でドイツも占領地などで現地の売春宿などを軍専用の施設として管理し、利用したことは事実です。
　だだしこれらは、橋下氏のどうやら豊富な風俗利用経験からする理解のように「兵士の慰安ため」などではありません。 兵士を性病から隔離し、軍の戦力維持をするのが主な目的です。また特殊ナチスの人種イデオロギーから、ドイツ軍兵士の「劣等民族との性交渉」を防ぐ目的も背景にありました。

　それに、日本ではほとんど知られていませんが、ドイツ軍には下級兵士にいたるまで、毎年３週間から４週間の帰郷休暇が与えられていました。敗戦間際まで出来る限りこの制度は実行されていました。日中戦争開戦以来の日本軍兵士には夢のような制度です。だだしこれも、「アーリア優等民族」を維持するための「子づくり休暇」としての制度であったと論じられています。ナチス型「産めよ増やせよ」政策です。そのため、わたしの戦中生まれのドイツ人友人にも「Urlaubskind／休暇の子ども」がかなりいます。
　
　ドイツ軍の管理売春の研究はまだ途上で、全体像は専門家もとらえていないようです。
ただし現時点でも、ひとつだけ確定できることは、日本軍のように植民地や占領地の若い女性を甘言や拉致で組織的に集め、２０万とも推定される膨大な人数の女性たちを拡大する最前線まで性奴隷として強制連行し続けた軍隊は他にはないということです。これが、日本軍による犯罪行為の特殊性なのです。
世界中で２０世紀の恥ずべき歴史とされるのはそのためです。橋下氏らが我慢できないとする「日本軍だけが悪者にされるの」ことには、このような根拠があるのです。この面では旧日本軍は特段に野蛮な軍隊でした。

　ところが、他方でナチスも特殊な強制売春施設を強制収容所内に設けていたことが明らかになっています。これについては若い研究者が１０年をかけて追求し、２００９年に学位論文ととして出版されたおかげで、全体像を知ることができます。ここで性奴隷とされた女性は、日本軍慰安婦の１０００分の１、すなわち２００名ほどですが、上記のわたしたちの共著にもあり吉見氏も引用されている、インドネシアのオランダ人抑留所から若い女性を選び出して売春を強制した、スマラン事件やマゲラン事件と手口がよく似ています。

　ただし、動機と目的は全く別であり、こちらにはナチスの特有なイデオロギーが背景にあります。したがって、日本軍の慰安所とは「手口」がにているだけで、比較はできないものです。しかし、ナチスのイデオロギー下で実証されている唯一の強制売春性奴隷制度に関する、貴重な研究として、ドイツではかなり評判になったものです。
　日本のかつての同盟国の性奴隷犯罪行為のひとつとして、橋下暴言によりこの研究を想起しました。性奴隷制度のひとつの証明された事実であるからです。

　わたしは、出版後に、４５０ページの大著の内容の解説を執筆公表していますので、とりあえず以下、→『インパクション』誌に発表当時そのままを以下に再録しておきます。執筆は２００９年１２月です。
（後略）

（引用ここまで）

もう一度音読しましょう。

『日本軍のように植民地や占領地の若い女性を甘言や拉致で組織的に集め、２０万とも推定される膨大な人数の女性たちを拡大する最前線まで性奴隷として強制連行し続けた軍隊は他にはないということです。これが、日本軍による犯罪行為の特殊性なのです。世界中で２０世紀の恥ずべき歴史とされるのはそのためです。』

さらに言えば、現在のドイツには、公人がこの件を含めてナチスの所業を弁解しようとしたり正当化しようとしたりなかったことにしたりすることはもはやありえません。戦時犯罪の反省が徹底していたからです。ドイツよりも規模の大きい戦時性暴力をはじめとする数えきれない日本の戦争中の犯罪や暴虐行為の言い訳を続ける「公人」が今も多数いる日本とは全然違います。日本もドイツを見習えば、世界から非難されることもなくなるのに、日本国と日本人は安倍晋三や橋下徹や石原新太郎を筆頭に、なぜこうも愚かで傲慢であり続けようとするのでしょうか。

外国軍の「慰安所制度」あるいは「慰安所という慣習」があったなら、まともな調査結果をたずさえて、『事実に基づいて』批判することは大いにやったらいいのです。しかし、そうするなら、第二次大戦中の日本の従軍慰安婦をめぐる史実は裁判でも学問でも確立しているのですから、外国軍に対する批判の数十倍の批判を受けなければならないのです。「外国だってやったじゃないか」派の人たちは、そこまでわかって言っているのでしょうか。

こちらもどうぞ。

■http://www.asyura2.com/13/senkyo147/msg/769.html

■http://twitpic.com/cr839q

日本軍「慰安婦」制度の場合、「慰安所」設置の計画立案、ブローカー（業者）の選定・依頼・資金あっせん、女性集め、女性の輸送、「慰安所」の管理、建物・資材・物資の提供など、全面的に軍が管理運営しました。日本軍は兵員数から必要な女性の人数を計算して計画し、軍の輸送手段で海外に連行しました。ここまで組織的・系統的に軍の管理下に置かれたケースはナチス・ドイツを除くとほかの国ではまずありません。

　ドイツでも国防軍やナチスのSS（親衛隊）がそうした「慰安婦」制度をつくっており、この２カ国が突出していたと言えます。

　さらに日本軍の場合は、軍自らが女性集めをおこなったこともしばしばありましたし、中国や東南アジアなどでは暴力的に拉致してくることもありました。これは被害者の証言だけでなく日本兵の証言もたくさんあります。

　米軍の場合はどうでしょうか。橋下氏は沖縄の司令官に米兵の風俗業利用を提案し拒否されました。国防総省も否定したように、米軍は公式に売春を認めていません。第２次大戦中も米軍はそうした建前をとっていました。末端では建前と違う実態もありましたが、売春宿の利用が本国に知られればオフリミッツ（立ち入り禁止）の措置が取られました。公然と「慰安所」を管理運営していた日本軍とは違います。

　朝鮮戦争のことを橋下氏は持ち出していますが、韓国軍も確かに同じような「慰安婦」制度をつくりました。しかし当時の韓国軍の幹部の多くは旧日本軍の一員でした。つまりそのルーツは日本軍の「慰安婦」制度だったのです。

　日本軍「慰安婦」制度と同じことをやった国がほかにもあるというのであれば、逆にその証拠を出すべきでしょう。

（引用ここまで）

...橋下徹はここまでわかっていないと思われます。この調子で橋下がツイートを続けると、世界中の国にケンカを売っているような結果、あるいは完全なやぶへびの結果になりそうです。

---

●国会議員への投書のための「議員名簿」→http://www.eda-jp.com/link/link1.html
●マスメディアへの投書のための「News for the people in Japan」マスメディア問い合わせ用リンク集→http://www.news-pj.net/link/media.html
●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集　（適宜更新）」経由で→http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html