
ここしばらく、安倍晋三政権の新税制大綱に関連して、日本でも「富裕層増税」の文字がマスメディアの中に突然増えたように感じるのですが、今まで「富裕層増税」という文字も見たくなかった一部のマスメディアが以前ほどの抵抗もなく報道をしているように感じます。報道をメモしながら、日本で今安倍政権によって進められようとしている「富裕層増税」を含む税制改革が、「担税力のある者に応分の負担を本当に求めるものになるのかどうか」、一言書いておきたいのです。
その前に、海外の富裕層増税について、うちで過去に書いてきた記事を復習させてください。たくさんあるので、いくつかだけにしぼります。
■フランスの2013年度予算案: 富裕層・大企業への応分の負担を求める。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3766.html2012-09-30
■フランスの金融取引税は2012年8月から実施
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3768.html2012-09-30
■アメリカで受け入れられつつある富裕層増税 (追記あり)
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3941.html2012-12-02
■仏フランソワ・オランド政権の目指す「最富裕層所得税率75%」政策のその後
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-4029.html2013-01-09
これらの記事で取り上げたことなどを思い出すと、担税力に応じた応分の負担を求める増税案とは、次のようなもののはずです。
▼超高額所得者増税
▼金融取引税増税
▼下げ過ぎた法人税の税率を元に戻す
▼作りすぎた税制優遇措置を見直す
担税力に応じた応分の負担を求めるこれらの増税の目的は、貧富の格差の是正です。それによって、社会の中をお金を回していかなければならないのです。特に、
日本では、税による富の再分配後に貧富の格差が拡大するという、貧しい者からしぼりとって富裕層を優遇する政策を実行していますから、少々の格差是正策ではとても先進民主国のレベルには追い付かないのです。
では、第二次安倍政権の税制改革はどんなものでしょうか。
●東京新聞(TOKYO Web)
税制改正 富裕層増税へ加速 格差不満に配慮
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013011102000097.html
2013年1月11日 朝刊
政府・与党の二〇一三年度税制改正で、富裕層への増税が焦点となっている。景気低迷や格差への国民の不満を和らげようと、裕福な人に負担を求める流れはフランスなど各国でも大きな潮流だ。仮に消費税増税が実施された場合に、低所得者ほど負担が大きくなる「ゆがみ」への配慮を見せたい狙いもある。 (須藤恵里、藤川大樹)
所得税は二十数年来、景気対策などの理由で、税率が順次引き下げられてきた。消費税導入前の一九八六年に70%だった最高税率は、現在40%まで低下し、富裕層ほど有利になる流れが続いている。
このため、高所得者層への所得税の負担をより多く求める構えだ。収入に応じて税率が高くなる所得税の最高税率を引き上げ、全体としてあらゆる所得層の負担感を公平にならす。富裕層からの税金を低所得者の福祉などに充てることで、所得格差を小さくする機能の回復も狙う。
現在、所得税の税率区分は六段階で、最高税率は千八百万円を超える部分に適用される40%。公明党は、新たに税率区分を二段階増やして、三千万円超で45%、五千万円超で50%の税率を適用する案を提示している。
ただ自民党の支持者には比較的、富裕層が多く、所得税増税に反発する声は根強い。公明党幹部は「自民党との協議では第一球は高めの球を投げるが、実際には二段階の引き上げは難しいだろう」と話しており、45%を落としどころにしたい本音をにじませた。
相続税については、税収を増やすため、より多くの人に税がかかる方向で調整する。背景にあるのは、ここでも低所得者への配慮だ。相続できるほどの預貯金や土地を持つ富裕層により多く課税すれば、消費税増税が実施された場合でも低所得者の不満を和らげられると考えている。
相続税は、死亡した人の財産を相続した人にかかるが、税金がかからない枠「基礎控除」が認められている。
現在は、五千万円に加え、相続する人一人当たり一千万円分の範囲は税金がかからない。例えば一億円の遺産を妻と子ども二人で相続する場合、二千万円に対してのみ相続税がかかる。この場合、遺産が八千万円だと相続税は課されない。
現在、日本で相続税を納めているのは、百人に四人のみと少ない。こうした相続税特有の課題も是正しようと、税率の引き上げや基礎控除の縮小を検討している。与党は「広く国民の理解を得られる税制にしないといけない」(公明党幹部)との方針で、裕福な人への負担を多く求めたい考えだ。
(転載ここまで)
●日本経済新聞
富裕層増税、15年1月から 税制大綱決定
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS24052_U3A120C1EE8000/
2013/1/25 2:00
2014年4月の消費増税とともに、15年1月からは富裕層への所得増税と資産家への相続増税が決まった。所得の少ない高齢者などで消費増税の負担感が強まるとみられるため、格差を和らげる観点から富裕層に増税する。株式の配当と譲渡益への軽減税率も13年末で終わり増税となるが、経済対策に盛り込まれた企業向けの減税も大きい。税制改正の効果は国と地方を合わせると小幅の減税になりそうだ。
所得税が上がるのは課税対象となる所得のうち4000万円を超える部分で、税率が40%から45%に上がる。新たな制度でも4000万円以下の所得での税率は変わらない。財務省は今回の所得増税で対象になるのは約5万人で、増税による税収増は年約600億円と見込んでいる。
経済活力を重視する自民党は富裕層への課税強化に慎重だったが、連立政権を組む公明党や民主党にも配慮して増税を決めた。
相続税と贈与税の見直しは年約2400億円の増税となる。負担増として大きいのは相続税だ。課税対象となる相続財産から差し引く「非課税枠」である基礎控除が15年1月から「3000万円+600万円×法定相続人数」となり、現行よりも4割縮小する。
現在は相続税の対象となるのは100人亡くなった場合で4人程度。基礎控除の縮小で、これが6人程度に増える。ただ、増えるのは地価が高い東京都など都市部に集中する。急激な負担増を避けるため、政府・与党は個人が住居に使っていた土地の相続税を減税する措置の対象となる土地を従来の240平方メートル以下から330平方メートル以下に広げる。
証券投資も増税になる。個人が投資する株式や株式投資信託の配当や譲渡益に適用されている10%の軽減税率が、14年1月から20%に戻るためだ。国と地方を合わせて約2130億円の増税となる。
一方で14年1月には年に100万円までの投資を対象にする「少額投資非課税制度」が始まる。日本版ISAと呼ばれるこの仕組みでは、投資してから5年間の配当や譲渡益が非課税になる。若年層が中長期の資産形成をするのを後押しする仕組みだ。
企業向けには設備投資への減税などが並ぶ。緊急経済対策にかかわる税制は年3300億円の減税となっている。これとは別に住宅ローン減税や、滞納した税にかかる「延滞税」の引き下げなどがあり、今回の制度改正では国と地方を合わせて約600億円の減税になる。
(転載ここまで)
ぼんやり読んでいると、なんかいいことずくめのような内容ですが、私は警戒をゆるめません。たとえば、「少額投資非課税制度」。「年に100万円までの投資を対象にして、投資してから5年間の配当や譲渡益が非課税になる。」というものですが、中長期の資産形成がこんなもので実質的にできるとは私には思えません。投資して確実にリターンがあるとは限りませんし、投資する余裕がない人の方が多いのではないでしょうか。こういうものは証券会社あたりに手数料を稼がせるだけでしょう。それよりも、雇用の正規化や安定化を拡大することや、賃金上げの方がずっと重要でしょう。私はこのような「少額投資非課税制度」は格差是正には役立たないどころか、逆に、この制度を利用できるだけの余裕がある層とない層との間に新たな格差をもたらすことすら予想してしまいます。
そして、客観的な事実として、「金融取引税」が入っていないことも指摘させていただきます。安倍政権の税制改革は内容的に不十分だし、貧富の格差を本当に解消しようとしているのかどうかも私は疑います。私は警戒をゆるめません。
実際、抜け道として、財産贈与優遇や企業減税がしっかり入れられました。
●朝日新聞デジタル
■富裕層増税に抜け道 財産贈与優遇、企業減税目白押し
http://www.asahi.com/politics/update/0119/TKY201301190001.html
2013年1月19日6時0分
【大日向寛文】2013年度税制改正案づくりが大詰めを迎えた。14年4月から消費税が上がるのにあわせて裕福な人の所得税と相続税を増やすが、「抜け道」になりかねない贈与税減税も用意した。景気を優先して企業向けは減税に力を入れる。自民・公明の与党は24日、改正案を盛り込んだ「税制改正大綱」をまとめる。
大きなテーマはお金持ちへの増税だ。所得が低いほど負担が重くなる消費税の税率は14年4月に8%、15年10月に10%に上がる。裕福な人にも増税しないと不公平になる。
自民、公明はこれまでに、亡くなった人の遺産にかかる相続税について、遺産額のうち税が免除される「基礎控除」を縮小し、より多くの人に納めてもらうことで一致した。
最も高い税率も、今は税がかかる遺産額が3億円を超えると50%になっているが、新たに6億円超は55%に引き上げる。
(後略)
■富裕層増税に「抜け道」 税制改正、負担の公平性に疑問
http://www.asahi.com/politics/update/0124/TKY201301240102.html
2013年1月24日13時46分
【大日向寛文】今回の税制改正では、昨年8月に消費増税を決めた時に先送りした裕福な人向けの増税を決めるかどうかが最大のテーマだった。食料品など生活必需品にもかかる消費税を上げれば、低・中所得者の負担は重くなる。裕福な人の増税も決めないとバランスがとれないからだ。
高所得者や資産家から支持を受けてきた自民党は、こうした増税には後ろ向きだった。昨年末の衆院総選挙で再び政権を握ってから1カ月ほどの「短期決戦」(安倍晋三首相)で党内の反発を抑え、何とか相続税や所得税の増税をまとめたことは評価できる。
しかし、税負担は国民各層に公平になっているのかを考えると、疑問が残る。
(後略)
(引用ここまで)
そこで、負担の公平性に疑問を呈する社説を読みましょう。
●中日新聞(CHUNICHI Web)
税制改正大綱 負担の公平性に疑問だ
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2013012502000090.html
2013年1月25日
自民、公明両党が二〇一三年度税制改正大綱を決めた。消費税増税での負担増を考慮し、減税項目が前面に多く並んだ。相対的に低中所得層への配慮が乏しく、不公平感が残るのが問題だ。
やはり、と思わざるを得ない内容である。二〇一四年四月の消費税率引き上げや、「決戦」と位置付ける今夏の参院選をにらみ、自動車取得税廃止や住宅ローン減税の拡充など減税項目が目立つ。そればかりか「道路特定財源」を復活させる方針に至ってはかつての古い自民党への回帰かと受け取られても仕方あるまい。
道路特定財源は、自動車重量税と、ガソリンにかかる揮発油税の税収を財源に、その大半を道路整備に充てていた。しかし、「無駄な道路建設の温床」との批判から麻生政権の〇九年度に、使い道を特定しない「一般財源」に変えた経緯がある。
政権復帰した途端に、それを「先祖返り」させ、道路の維持管理や更新に充てるのでは、地方や特定業界への利益誘導ととられ「自民党は変わっていない」と印象づけるだけである。
自動車取得税の廃止にしても、消費税増税による販売減を懸念する自動車業界への配慮なのは明らかだ。取得税は「地方税」のため、廃止すれば税収減となる地方自治体が困ってしまう。そこで重量税を地方の道路整備などに充てる事実上の特定財源にしたわけだ。業界にも、地方にも配慮したということだ。
なるほど経済再生を最優先に掲げるだけに、雇用や賃金を増やしたり設備投資する企業の法人税を減税する制度など、新しい工夫も見られる。今年末までの住宅ローン減税を延長・拡充するのも景気の下支えになるだろう。
だが、消費税増税が実施されれば、負担増が重くのしかかる低所得者対策は結局あいまいなままだ。生活必需品などの税率を軽くする軽減税率は、一五年十月の税率10%引き上げ時に導入を目指すとしただけである。
対照的に、消費税増税の不公平感を和らげるための富裕層への課税強化では、教育資金の名目で孫一人当たり千五百万円までの贈与を非課税とする「お金持ち」配慮の制度を設けた。
税制は国民生活の重要な基盤となる。政権がどこを向き、どういう社会を目指しているのかがよく表れる。残念ながら、この大綱からは低中所得層の負担感がより増すような不公平感が漂っている。
(転載ここまで)
『雇用や賃金を増やす企業の法人税を減税する制度』は、確かに、今のフランスの税制改革でも盛り込まれていた内容です。日本で税制改革に盛り込むことを本当なら歓迎したいところです。しかし、日本で雇用や賃金を増やすことを法人税減税で後押しする効果は多くの労働者にはほとんどないだろうと思われるのは、日本の財界や経済界が雇用の安定や賃金値上げを拒み続けているからです。ついでに言えば、政府だって、公務員の給与を下げるばかり、生活保護も削減するばかりで、財界も政府も国民の給与や所得や生活基盤を向上させようという発想を全くと言っていいほど持っていないからです。したがって、この減税が雇用や賃金に与える良い影響はとても限定的、あるいはほとんどないと私は予想するのです。
「残念ながら、この大綱からは低中所得層の負担感がより増すような不公平感が漂っている。」という結びの言葉は正当な結論でしょう。
さて、徳岡宏一朗弁護士の次の記事では、「祖父母が孫に教育資金を一括贈与した場合、贈与税を非課税とする措置を盛り込む」ことについて触れています。
●Everyone says I love you !
安倍自民党政権の「教育再生」利権が凄いんです
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/2d3b5a00493f14e00f40d3bb0d8b5a41
2013年01月09日
(前略)
政府は2012年1月9日までに、緊急経済対策として、祖父母が孫に教育資金を一括贈与した場合、贈与税を非課税とする措置を盛り込む方針を固めました。なんと非課税額の上限を1人最大1500万円とする方向で調整しています。
なにしろ、孫一人につき1500万円の非課税贈与が認められるということになると、お金持ちだとお孫さんの数も多いですからね。とてつもない「節税」が行われることになります。
この措置の大義名分は富裕層で滞留している資産を孫の世代に渡させて流動化する、というのですが、それなら富裕税を導入し、得られた税収を低・中所得層につぎ込み、所得の再分配をすればいいわけです。
日本からケイマン諸島に個人投資家が15兆円の証券投資 消費税増税より富裕層に富裕税をかけよう
逆にこんな富裕層の贈与税の非課税を認めたら、贈与税は入らないし、本来相続の時に相続税を取れるはずだったのにそれも取れないし、財政赤字はますます拡大です。実は、こんな税制改悪に大義などないのです。
そして、政府がこの教育資金贈与の非課税措置を検討していることが伝わり、1月9日の東京株式市場では、老人のタンス預金が塾に流れ込むとの思惑から、学習塾銘柄が軒並みストップ高となりました。資産の移動だけなら教育資金に限らなくてもいいわけで、まさに、この緊急対策がお金持ち優遇だけではなく、教育業者の利権のための政策であることは明らかになったといえるでしょう。
ところで、安倍首相は第一次安倍内閣の時も今回も教育再生を第一の課題としていますが、第一次の時になしとげた教育基本法改悪により伝統と文化の重視が入った結果、何が起こったかというと、武道の必修化です。これによりそれでなくとも重大事故の多かった柔道の事故が多発するであろうということは何度も書きました。
安倍晋三政権の後遺症 教育基本法改悪→今年から中学での武道必修化で学校死亡事故多発か
しかし、この武道必修化の真の狙いは、やはりこれも利権にあったのです。だって、日本の伝統や文化を子どもたちに学ばせたいなら、武道必修化より、礼法の授業を導入したほうがいいでしょう?また、茶道や華道を学ばせるという発想もあるのに、そういうことは全然検討していませんからね。礼法なんて誰も儲かりませんから。
(後略)
(引用ここまで)
祖父母が孫に教育資金を一括贈与なんてことができる層は限られており、ほとんどの人々には縁がありません。富裕層への減税が良い経済効果を生んだことは世界的にもほとんどなかったのですから、これは、見かけだけの富裕層増税にさえ不満な富裕層に対する抜け道を用意したものであると私は解釈します。
安倍晋三政権の税制大綱に負担の公平性があるとはどうしても信じられない、と言わざるをえません。
日本では、税による富の再分配後に貧富の格差が拡大するという、貧しい者からしぼりとって富裕層を優遇する政策を実行していますから、少々の格差是正策ではとても先進民主国のレベルには追い付かないと繰り返します。
さて、以下はおまけのようなものですが、ここにメモします。富裕層の富裕層による富裕層のための新聞、日本経済新聞が読者を対象にインターネットによる調査を行なっているのですが、なかなか興味深い内容です。記録させていただきましょう。
●日本経済新聞
富裕層増税、62%が「妥当」
クイックVote第116回解説 編集委員 大石格
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2102O_R20C13A1000000/
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2102O_R20C13A1000000/?df=2
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2102O_R20C13A1000000/?df=3
2013/1/22 6:00
富裕層を主なターゲットにした所得税や相続税の増税について電子版読者は62.9%が「妥当」との回答でした。財政再建に向けて増税が避けられないときに、いかに公正を担保するのか。大衆増税である消費税率引き上げを実施するからには、やはり富裕層の負担増はセットとの見方が多いようです。
自公政権と野党第1党の民主党は21日、所得税の最高税率を40%から45%へ、相続税は50%から55%へ引き上げることで合意しました。野党とも話がついたことで富裕層増税が実現することが確実になりました。
増税賛成の読者のコメントは大きく3つに大別されます。
1つは伝統的な「持てるものが負担すべきだ」という考え方です。
○カネ持ちはもっと負担すべきだ(59歳、男性)
○富裕層は一般人がいるから成り立っている(49歳、男性)
2番目は貧富の差が近年、拡大していることへの対応として累進強化が必要だというもの。
○格差是正のための所得再分配を考える時期に来ている(71歳、男性)
○持てるものと持たざるものの差が開きすぎだ(40歳、女性)
最後は望ましい政策ではないが、やむを得ないというものです。
○プラス5%ならば微々たるもの(71歳、男性)
○消費増税を実現するため(65歳、男性)
「持てる人」に属すると思われる「やむを得ないが、税の使途を改善してほしい」(73歳、男性)という書き込みもありました。
では妥当ではないという読者のコメントもみてみましょう。こちらはほぼ同じ内容でした。
○国際的に高い水準。資産流出が加速する(38歳、男性)
○個人のやる気をそぐ(54歳、男性)
○レーガン米大統領の富裕層減税は毀誉褒貶(ほうへん)があったが、カーター大統領時代のスタグフレーションからの脱却に成功した(58歳、男性)
回答者の内訳
回答総数 1298
男性 92%
女性 8%
20代 6%
30代 17%
40代 25%
50代 27%
60代 19%
70代 5%
80代以上 1%
小数点以下は四捨五入
ちなみに具体的な数字を入れた回答が多数あり、増税の対象になりそうな読者がこの問題に高い関心を持っていることがうかがえます。
なお、富裕層減税に反対するように誘導する質問だったという書き込みもありました。小職は富裕層ではないので、個人的な利害はありません。設問時に書いたように重要なのは日本経済の全体としての発展です。人材流出で日本の国際競争力を損なっては困りますし、他方で必要な税収が確保できないのも困ります。
日本人は欧米に比べて地理的にも言語的にもよその国に簡単に移住できません。「週1日ぐらいは東京本社に顔を出したいし、オレは英語はしゃべれない」では欧米人がよくやるカリブ海の島々への移住に踏み切るのは難しいでしょう。日本政府は、他の主要国よりも富裕層増税に踏み込む余地が大きい恵まれた環境にあるともいえます。
それを踏まえ、どの程度のバランスが望ましいのか。景気が悪いと「カネ持ち妬ましい」という気分になりますが、もう少し冷静な議論が必要でしょう。
個人は移動しにくいが、企業は簡単に移動できる。こちらはすっかり常識になりました。2番目の課税強化すべき分野の質問にあえて法人税増税を入れておきましたが、選んだ読者は4.1%にとどまりました。
一番多かったのは酒・たばこ税の増税でした。酒税はともかく、たばこ税に関しては
○生活必需品ではない(58歳、男性)
○医療費の削減につながる(45歳、男性)
など積極増税論が目立ちました。
ガソリンへの課税強化は法人税増税よりさらに賛同が少なかったですが、「炭素税を設けるべきだ」という環境保護の観点からの意見があったことは紹介しておきます。
その他として書き込みがあったアイデアのうち主なものを以下に並べます。
○企業の内部留保への課税
○赤字法人への課税
○利子所得への総合課税
○宝石などぜいたく品への課税
○宗教法人への課税強化
○居住用を除く不動産にかかる固定資産税の課税強化
○海外旅行税
などでした。なかでも宗教法人への課税強化はたくさんの読者が指摘しました。
3問目。負担軽減してほしい分野ではやはり法人税が最も多く、今回の税制改正で半分だけ実現する自動車車体課税の軽減が次点でした。
こちらもその他に書き込まれたものを以下に並べます。
○ゴルフ税の廃止
○省エネ関連の税負担軽減
○少子化対策につながる税負担軽減
財政難のおりに減税は不要であり、質問そのものがナンセンスという回答もありました。
◇
安倍内閣の支持率は69.6%でした。1週間前より2.6ポイントの上昇で、ここまでの政権運営は順調といえるでしょう。
安倍晋三首相の周辺は「7月の参院選までは安全運転でいく」と語っており、国論を二分しそうな憲法改正などにできるだけ言及しないようにしている効果が出ているようです。
この勢いを維持できるのか。次回はアルジェリアでのテロ事件や麻生太郎副総理の「さっさと死ねるように」発言がどう影響するのかが注目です。
(転載ここまで)
富裕層への増税は富裕層を海外脱出させるだけだと言わんばかりの主張を私はよく聞かされましたが、このアンケートの回答に応じた人々の中には、「持てるものが負担すべきだ」という考え方や、「貧富の差が近年、拡大していることへの対応として累進強化が必要だ」という考え方も示されていたそうです。フランスやアメリカやドイツやスペインやイタリアでも富裕層増税が説かれているのと同様、日本でも富裕層増税の必要性や妥当性の説明をかかげて富裕層に語りかけることは決して無茶なことではないと思わされました。かすかながら希望の光を感じた、と言っておきましょう。
一方、富裕層増税に反対する意見もあるものの、その論拠は弱いように私には見えます。多少の富裕層増税程度で「個人のやる気をそぐ」などと言う者に対しては、「その程度でやる気をそがれるなら、あなたは働かなくてもけっこうですよ」と言ってやりたいですね。
注目したのが、この記事を書いた日本経済新聞の記者が「日本人は欧米に比べて地理的にも言語的にもよその国に簡単に移住できません。「週1日ぐらいは東京本社に顔を出したいし、オレは英語はしゃべれない」では欧米人がよくやるカリブ海の島々への移住に踏み切るのは難しいでしょう。日本政府は、他の主要国よりも富裕層増税に踏み込む余地が大きい恵まれた環境にあるともいえます。」と書いていること。この一文を書いた編集委員は強欲日経の中でも比較的良心的な人だと思いました。
そして、『安倍晋三首相の周辺は「7月の参院選までは安全運転でいく」と語っており、国論を二分しそうな憲法改正などにできるだけ言及しないようにしている効果が出ているようです。』ともこの編集委員は書いています。政治と利害関係を緊密に共有している日本経済新聞が、安倍政権の政策が一見良さげに見えるのは7月の参院選までですよ、と指摘してくれているのです。
今の安倍政権の政策が一見大多数の国民のためになりそうなものを含んでいても、決して「安倍政権を応援しよう」と言ってはいけない、と改めて思いました。
●国会議員への投書のための「議員名簿」→
http://www.eda-jp.com/link/link1.html●マスメディアへの投書のための「News for the people in Japan」マスメディア問い合わせ用リンク集→
http://www.news-pj.net/link/media.html●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集 (適宜更新)」経由で→
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html
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http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-9028.html
以下は中学校学習指導要領の解ewkefcノーベル賞学者の平和主義日本のジャーナリストからノーベル平和賞受賞者はなぜ出ないのか。 2021年ノーベル平和賞を受賞したマリア・レッサさんは30年以上ジャーナリストとして活躍してきました。ニュースサイト「ラップラー」の最高経営者・編集長を務めます。19Takeshiアメリカなどによる2003年のイラク攻撃は誤っていた。そのことを認めようとしない #自民党 の日本は、自らの過ちを反省できない重大な欠陥を抱えたまま失敗や破滅に向かって暴走し続けるのか。No title『アメリカなどによる2003年のイラク攻撃は誤っていた。そのことを認めようとしない #自民党 の日本は、自らの過ちを反省できない重大な欠陥を抱えたまま失敗や破滅に向かewkefcコオロギ食、昆虫食はお断りします。日本は外国人観光客に心地よい食事を提供できているか。 私が娘から聞いたところでは,中国人観光客が日本に来て困るのはお湯(白湯)を飲むことができないことだそうです。仕方なくマクドナルドで紅茶のようなものを買うと,テTakeshi沖縄で「職務」中に『土人』暴言を行なった大阪の機動隊員が、レイシスト右翼活動家に自ら名前を呼んで話しかけて談笑していた件「4月1日=Lデー」を忘れてはならない。 1945年4月1日,アメリカ軍兵士18万名が沖縄本島の読谷村と嘉手納の海岸に上陸しました。Lデーは,アメリカの日本侵略開始の日の暗号なであるラヴ・デーのことを言いますTakeshi日本の戦争責任についての神奈川新聞のすぐれた記事本島等長崎市長の発言 1988年12月7日,長崎定例市議会で本島等市長は共産党議員からの質問に答えました。
「戦後四十三年たって,あの戦争が何であったかという反省は十分できたというふうTakeshiカルロス・ゴーン氏の逮捕、勾留と、日本の人質司法日本の司法制度改革を求める。 日本の司法制度改革を次のように求めます。
・ 政府から独立した人権委員会の設置が必要である。
・ 裁判員裁判で死刑の決定を下すには,裁判員多数決によらず全Takeshi片方のチームの反則選手にレッドカードを出さない審判や当の反則選手を自ら批判せず、相手チームを「手詰まり」と評しているような不甲斐ない時事ドットコム @jijicom #マスメディアへの不信 #マスメディアへの不満No title『片方のチームの反則選手にレッドカードを出さない審判や当の反則選手を自ら批判せず、相手チームを「手詰まり」と評しているような不甲斐ない時事ドットコム @jijicom #ewkefc袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。鑑定不正 本人訴訟で裁判を経験してみると、判事がトンデモだとすぐ分かる。
私は民事で原告だけど、捏罪された。
よって刑事裁判では冤罪が多数ある。
風間博子さん、林眞須美檜原転石なんで性暴力の被害者を批判する弁護士が偉そうにするかな。女の子のトイレを覗いていた元加害者としての自分を恥じるべきではないのかな。ゴロツキ弁護士 徳永信一は極右弁護士ですが、例えば右翼弁護士(木原功仁哉・南出喜久治)が反「ワクチン」訴訟などをやっていて、「ワクチン」打て打てキャンペーンのメディア及び挙国檜原転石袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。袴田事件は冤罪そのもの「疑わしきは被告人の利益に」が近代司法の原則ですが、日本では疑わしきは罰せられます。
検察の起訴した事件の有罪率が99%、本当に99%が有罪なのか?
そんなことは閉口日中国交正常化50年に寄せて中国とホンジュラスの国交樹立を歓迎するアメリカの裏庭といわれた中南米のホンジュラスが3月26日アメリカの圧力、妨害をはねのけ新中国との国交樹立を発表しました。
心より歓迎したいと思います。
アメリカの閉口孤独の中で援助もなく死産した技能実習生のベトナム人女性は何も罪を犯していない。リンさんへの逆転無罪判決を歓迎2023年3月24日,最高裁は死体遺棄罪に問われていたレー・ティ・トゥイ・リンさんに逆転無罪判決を下しました。これでリンさんの無罪が確定しました。たまには最高裁もまとTakeshi袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。冤罪と死刑 過去にトンデモ発言をした萱野稔人・津田塾大学教授ですが,死刑についてはまともな議論をしていると思います。「死刑 その哲学的考察」(萱野稔人/ちくま新書)から一Takeshi差別主義経営者のいるホテルチェーンと日本サッカー連盟との不適切なナショナルチームパートナー契約他人を出汁にする人間前コメントの未来さんのおっしゃる様に、誰かを嫌な気持ちにさせてやりたい攻撃性がある人ばかりが、目立ちます。
最近、そうなったのか、あるいは以前からそうだったのかK.Minaイギリスでは嘘の答弁をしたら議員失職になる可能性があるそうです。日本の自民党政府も、そうあるべきです。自民党議員が半分そんな事が日本でも適用されたら、自民党議員は半分になってしまいますね(爆笑)
忘れてました…維新もです(爆笑)
どちらも大将から嘘つきですから。K.Mina日本国と日本人が大日本帝国軍性奴隷制度(従軍慰安婦制度)という蛮行の史実を記憶して二度と繰り返さないために反省しないなら、日本人以外の人々がかつての日本の蛮行を記憶する。カッセル大学で「平和の少女像」が撤去された。ドイツ中部の州立大学、カッセル大のキャンパスにあった「平和の少女像」が2023年3月9日,突然撤去されました。旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する少女像は昨年7月,同大学Takeshi袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。冤罪による処刑阻止のために死刑廃止が絶対に必要。「冤罪袴田事件 検察庁は再審開始を認めた東京高裁決定に対して特別抗告をしないでください」のアクションに賛同した私は,電子署名を行いました。先日,弁護団の戸舘圭之Takeshi袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。No title今回の袴田さんの再審決定の件を、メディア(特にTV)がWBCで過剰に騒いでかき消しているように見えてならないです。
冤罪を生み続ける警察・検察を徹底的に批判して、今後月乃兎袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。No title>検察を起訴し検察を有罪にすべきだとすら思います。
全く同感です。yoshi袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。No title『袴田巌さんの完全無罪を勝ち取り、無罪の者を無理に有罪にして真犯人を逃がした検察の過ちと暴力を解明すべき。』に対する意見
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blogewkefc自民党の城内実・衆議院議員から国連人権弁務官への攻撃発言がひどすぎるNo title杉田水脈を総務政務官に任命したのも絶句でしたが、よりによってこいつにLGBT特命委員会事務局長をやらせる岸田文雄の思考法が全く理解できない
自民党LGBT特命委員会事務名乗るほど者ではありませんが差別主義経営者のいるホテルチェーンと日本サッカー連盟との不適切なナショナルチームパートナー契約日本は永遠に「差別主義者が幅を利かす国」なんだろうな。これはWBCでの一幕なのですが、旭日旗を振り回して悦に入る日本人……
旭日旗がどのようなものなのか理解していればこんなことには、とも以前は思っていたのですが、どうも最未来バイデン米大統領は「未来永劫謝罪する義務を未来の世代に課してはならない」とは言わずに、今年も第二次大戦中の日系アメリカ人強制収用と公民権剥奪について反省と謝罪を新たにした。 #国家としての謝罪決して謝罪しないアメリカが謝罪した希少例ヒトラー・ナチスの手本は、米国の黒人差別法と先住民の強制収容所だった。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1123.html
優生学の親玉アメリカ問題は、それを巨大檜原転石ヘイト批判記事を書いた神奈川新聞の石橋学記者を「名誉棄損」として一部敗訴させた横浜地裁判決はおかしい。石橋記者の話を聞きます石橋記者を講師にオンライン講演会をします。
詳しくは
https://jcjkikansh.exblog.jp/32922330/ywatari4障害者自立支援法訴訟、和解へ重度の障がいを持って生まれた子の養子縁組 NPO法人みぎわは,障がいを持って生まれてくる赤ちゃんの特別養子縁組をあっせんする日本で唯一の施設です。中絶は年間20万件ほどあるそうです。協力病院の産婦人科医師Takeshi死刑FAQ (適宜更新)袴田巌さんの一刻も早い無罪を切望する。 2023年3月13日, 東京高裁は「無実の死刑囚・袴田巌さん」の再審開始を決定しました。決定で注目すべきは、決定理由中に,「捜査機関が証拠を捏造した可能性が極めて高いTakeshi自民党政府の作る行政文書は、自民党幹部世耕弘成氏によれば、真正・真実であるとは限らないらしい #自民党に投票するからこうなる#自民党に投票するからこうなる安倍チルドレンの高市氏は、総務大臣だった当時「行政指導に従わない放送局は電波停止にする」という恫喝発言で大炎上を巻き起こしました。
今回の文書の内容はこの恫喝発閉口強制ではなく任意であるはずの #マイナンバーカードの義務化に反対します #保険証廃止はありえない #保険証廃止の閣議決定に抗議します (2)自民党の十八番自民党の十八番
当初は任意であるといっておきながらいざ決定となると強制にしてしまうのが自民党のやり方です。
思い出されるのは1999年に成立した国旗国歌法、大日本閉口