仏ジャン=マルク・エロー首相の施政方針演説、全文訳 （2012年7月3日） (6) ～生産再建～

　　

「仏ジャン=マルク・エロー首相の施政方針演説、全文訳　（2012年7月3日）　(5)　～担税力にもとづいた高額所得者と不労所得への課税強化～」の続きです。

今回は生産再建の話ですが、生産再建のためにコスト削減、コスト削減のために人件費削減、という日本でのような話には当然なりません。「経済成長、競争力、雇用」を両立させていくことが必要であるという認識をエロー首相は示します。

実際にそれは容易ではないわけで、この演説がなされた7月3日以降約2か月がたっており、状況は改善しているわけではありませんが、「経済成長、競争力、雇用」を両立させていくことを政府が宣言するということの意味は日本の現状を考えるとたいへんに大切なことであると思います。


演説の動画はフランス国民議会のサイトで公開されています。（公開は2012年10月1日まで）

●Assemblée nationale
Séance publique / Mardi 3 juillet 2012
http://www.assemblee-nationale.tv/chaines.html?media=3301&synchro=0&dossier=10

そして、演説の書き起こしは国民議会のサイトに議事録として掲載されています。では、今回の分、いきましょう。

●Assemblée nationale
Assemblée nationale
XIVe législature
Session extraordinaire de 2011-2012
Compte rendu intégral
Séance du mardi 3 juillet 2012
国民議会　第14会期　2011-2012年臨時国会
2012年7月3日（火）の審議
http://www.assemblee-nationale.fr/14/cri/2011-2012-extra/20121001.asp

（前回から続く）

ジャン=マルク・エロー首相： 国家支出を抑制すること、新たな税収を見つけることが、私たちの国の立て直しにあらかじめ求められます。しかし、最近見聞きしたこととは反対に、我が政府は転換を実施する必要がありません。転換がないというのは、...

マルク=フィリップ・ドブレス議員： それは違う！壁に激突するぞ！

ジャン=マルク・エロー首相： 選挙戦の間すでに、2012年の経済成長の弱さを予見していたからです。 (UMPグループの席から叫びあり。) 経済成長を前の政府は0.7%と見積もっていましたが、実際にはもっと低いということを私たちは知っていました。実際、それは0.3%だったのです。
2013年も、前の政府よりも低い経済成長を見込んでいます。ですから、慎重に真摯に1.2%程度の経済成長を予見しなければなりません。

ミシェル・エルビヨン議員： あんたらは何も予測していないよ！

ジャン=マルク・エロー首相： 私たちは、2012年の予算には、過小評価されていた支出と、あまりにも楽観的な税収見込みが見込まれていたことを知っていました。

ヴァレリー・ペクレス議員： それは違うわ！

ジャン=マルク・エロー首相： 会計検査院の調べは私たちの予見が正しかったことを確認しました。
UMPグループの数人の議員： 違う！

ジャン=マルク・エロー首相： 状況はたいへんなことになっています。私はそのことを隠しはしません。しかし、その状況は、私たちのように完全に明晰な意識を持っている者たちにとっては驚きでもなんでもないのです。
私たちが示した予算建て直しの道は私たちがこれから使う方法です。私は予算に真剣に、責任を持つことを求めます。

イヴ・サンジ議員： それは間違いだ！

ジャン=マルク・エロー首相： 私は税制改革を求めます。私は税制の公正さを求めます。私は国民的努力を呼びかけます。しかし、緊縮財政は拒否します。 (社会党、環境保護派、急進共和国民主進歩派の席から拍手.。)
私たちは、経済成長のリターン無しには何事も不可能であるということを知っています。そして、経済成長のためのその闘いは二つの前線で行われます。国内の前線は生産の再建であり、欧州の前線は欧州連合の政策の方向性見直しです。
精算の再建には、あらゆる力、フランスのあらゆるエネルギー、フランスのあらゆる経済分野の動員が必要です。サービス業、工業、農業、食品産業、海洋経済、観光業、文化産業、デジタル産業、研究、社会保障・連帯にかかわる経済、すべてです。
生産性の再建とは、まず、私たちの国で長年行われている非工業化と決別する意思のことです。工業の再構築の計画は間もなく政府から提出されますが、そこにはフランスを世界的最高レベルに押し上げる意思があります。産業のない国には未来がありません。 (社会党の席から拍手。)
（保守政権が続いた2002年から2012年までの）ここ10年の間に、フランスにいて生産された富に占める工業の比率は26%から13%と半減し、残念ながら75万の雇用が失われました。

ピエール・ルルーシュ議員： それは（社会党政権が実行した週35時間労働制度のせいだろう！

クリスチャン・エストロジ議員： それは10年前からではなくて、30年前からだ！

ジャン=マルク・エロー首相： 私の政府はこの失速に終止符を打つつもりです。それが、私が提案する「経済成長、競争力と雇用の国家的協定」の意味です。7月の社会保障会議の中心に据えられます。
今からすでに、本政府は困難な状況にある自動車産業のための再建計画に着手します。今月には提出されます。

イヴ・サンジ議員： それは代替案（プランB）か？

モーリス・ルロワ議員： Pいや、むしろプランTだ！

ジャン=マルク・エロー首相： 濫用される解雇計画と闘って、持続的代替案を探し求めるための施策をとります。
構造的競争力は再建の根本的な鍵の一つです。欧州の他の国でも、重要分野の周りに特化や、...

フィリップ・ムニエ議員： 原子力産業！

ジャン=マルク・エロー首相： …質の高い製品のイノベーションや高価値化が私たちの工業戦略を作るでしょう。

フィリップ・ムニエ議員： なんだって？

（続く）

（翻訳引用ここまで）

なお、今回の分に出てくる「7月の社会保障会議」とは、次の記事で紹介しています。

■フランスの政労使三者会議：「社会政策・雇用政策・労使政策会議」　（2012年7月9日、10日）
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3612.html
2012-07-25

（前略）

フランス政府のポータルサイトから、2日間の日程を終えた後の公式発表を書き出します。

円卓会議方式で全部で7つのテーマが話し合われました。また、エロー首相の閉会演説動画もあります。まずは、フランスでは政労使が集まってこういう会議を雇用政策のために行なうのだな、と知っていただければよいと思います。

●Portail du Gouvernement
Grande Conférence Sociale 2012
2012年政労使三者会議：「社会政策・雇用政策・労使政策会議」
http://www.gouvernement.fr/premier-ministre/grande-conference-sociale-2012
11/07/2012

（前略）
円卓1：ミシェル・サパン 労働・雇用・職業教育・労使対話大臣の司会 : "雇用の開発、若年層雇用の優先"

円卓2：ティエリー・ルパンタン 労働・雇用・職業教育・労使対話大臣付職業教育・職業訓練担当大臣の司会 : "能力開発と終身職業研修"

円卓3：ピエール・モスコヴィシ 経済・財務大臣とブノワ・アモン 経済・財務大臣付社会的・連帯経済・消費担当大臣の司会 : "公正で効果的な労働報酬システムの保障"

円卓4：ナジャット・ヴァロー=ベルカセム 女性権利大臣、政府報道官の司会 : "職業上の平等の達成と労働における生活の質の改善"

円卓5：アルノー・モントブール 生産再建大臣の司会 : "生産再建の諸条件の結集"

円卓6：マリソル・トゥーレーヌ 厚生大臣の司会 : "定年退職と社会保護の保障"

円卓7：マリリーズ・ルブランシュ 国家改革・地方分権・公務員大臣の司会： "公務の担い手と共同しての公務活動の現代化"
（後略）

（転載ここまで）

こういうテーマで雇用政策関係の大臣を総動員して会議をやるわけです。
（後略）

（引用ここまで）

さらに続きます。

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●国会議員への投書のための「議員名簿」→http://www.eda-jp.com/link/link1.html
●マスメディアへの投書のための「News for the people in Japan」マスメディア問い合わせ用リンク集→http://www.news-pj.net/link/media.html
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