愛知県地域政党「減税日本」の挫折と無策

　　

名古屋と愛知から出たポピュリスト政党「減税日本」が、まさに「減税」政策でひとつ挫折した模様です。

●毎日ｊｐ(毎日新聞)
１０％減税：愛知知事が見送り発表　「経済と雇用最優先」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111105k0000m010149000c.html
2011年11月5日

　県民税１０％減税の見送り方針を固めていた愛知県の大村秀章知事は４日会見し、１０％減税を法人県民税では断念し、個人県民税も１２年度実施は見送ると正式に発表した。東日本大震災の影響などで景気先行きや税収見通しが不透明になったことを理由に挙げた。
　会見では、法人県民税の１０％減税分に当たる５０億円を１２年度から基金に積み立て、企業立地や研究開発投資への補助に充てると表明。個人県民税は１３年度以降の減税を目指すと強調し「４年間の任期中に実現する」と述べた。
　さらに「経済活性化や雇用確保に取り組むことが最優先」と述べ、自動車取得税と自動車重量税の廃止を目指す考えを改めて示した。県によると、廃止すれば県内で４４０億円相当の減税となり、２０万台の生産増と８万人の雇用創出効果がある。大村知事は既に国に廃止を要望した。
　大村知事は２月の知事選で、市民税１０％減税を掲げる河村たかし名古屋市長の応援を受けて初当選。１２年度の県民税１０％減税を目指し、今月２９日開会の定例県議会に条例案を提出する意向を示していた。【加藤潔】
毎日新聞　2011年11月5日　1時43分

（転載ここまで）

減税そのものを最初からの目的とする政策は、政治家としての政策構想力の無さを示していると思います。税金をどう使って国民、住民の生活支援や安心を実現するかこそが政府や地方自治体に課された使命なのです。

たとえば、投資に対する配当がほしい人がいれば、政府や地方自治体から配当を受けたいと望むのではなくて、自分で個人的に株でも買って配当を受けるべきなのです。

税金とは、ごく普通の慎ましい収入で生活する人にとっては、納めた税金の額よりも行政サービスという多くのリターンがかえってくるものなのですから。行政サービスを削ってまで減税するというのは本末転倒です。

そういう意味で、「減税」の自己目的化が今回挫折したということは、税金の意味を考える機会と時間が「減税日本」と有権者に与えられたという意味で悪いことではないと信じます。

さて、この記事でもうひとつ面白い...というか滑稽なことがあります。

それは、「自動車取得税と自動車重量税の廃止を目指す考えを改めて示した。県によると、廃止すれば県内で４４０億円相当の減税となり、２０万台の生産増と８万人の雇用創出効果がある」というところです。

愛知県はトヨタを中心とした自動車産業の地域ですから、自動車関係の減税をしようと大村知事が力んでいるのですね。でも、その税を「廃止すれば２０万台の生産増と８万人の雇用創出効果がある」と大村知事が本当に思っているとしたらとても滑稽です。

大村知事が自動車関連の税の減税を実現させたら「愛知県内での自動車生産増と雇用増」をするとトヨタが約束して、愛知県と覚書でも取り交わしたのでしょうか？いえ、覚書などを取り交わすとも思えませんし、そもそもトヨタ幹部と本当にそんな交渉をするはずもないと思います。トヨタ（というか、自動車会社一般）は、自動車関係の減税があったとしたって、ごの減税分に見合った雇用増や日本国内での生産増を自動的に政府や地元自治体に約束するわけはないと思います。

「雇用増を実現したらそれに応じて減税してあげるよ」とトヨタに提案するようなやり方ならまだしも、本当に雇用を生みたいのなら、ただ減税するだけではだめなのです。...なんて当たり前のことを知事に言わなければならないというのは虚しいことです。


うちの関連記事。
■名古屋市と東京都杉並区の「減税」構想の無意味ぶり
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2011-01-10

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↑『がけっぷち社長』さん作。また、税制についての当秘書課の記事は、「カテゴリ : 税制、税金、財政」から。

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