「昔を理解する難しさ」と「外部の他者の思いを理解する難しさ」 （コメントに答えて）

「昔を理解する難しさ」という題でコメントを書かれたトオル様、はじめまして。

＞自分の思想信条ありきで、物事を見ないようにしてください。真実を見る目が、霞んでしまいます。

私には私の思想信条があります。そして、あなたにはあなたの思想信条があります。もし私があなたに「自分の思想信条ありきで物事を見ないようにしてください」と言ってしまっては議論が成り立ちません。ですから、「自分の思想信条ありきで物事を見ないでください」というのは禁句だと私は考えます。「自分の思想信条ありきで物事を見ているために真実を見る目が霞んで」しまっているのは、もしかしたらあなたかもしれないのですから。

よく思いをはせる必要があるのは、どういう立場からのどのような思想信条なのか、ということだと思うのです。

＞この平和な現代の価値観で、過去の出来事について批評をしていませんか？　明治維新から大東亜戦争までの、激動の時代を生きた日本人についてどうお考えですか？

私は、植民地主義、領土拡張主義、軍国主義にかられた日本の行動が周囲の諸国とそこに住む人々、そして、日本自身と日本に住む人々をも傷つけたと思っています。日本の外から見る人はそう考えて不思議はありません。

今の時代から遠い過去の時代を振り返るとき、たとえば、奴隷制があった時代のことを振り返るとき、今の価値観で当時の奴隷制を批判してはいけないのでしょうか？奴隷の反乱に悩まされた激動の奴隷制の時代を生きた奴隷所有者たちについてどうお考えですか？当時の価値観は奴隷制を肯定していたから、今も奴隷制を肯定しなければいけないのでしょうか？

そういうことになってしまいます。

日本には当時の日本の事情、激動の時代のやむをえない事情があった、しかたない、とおっしゃりたいのだと思います。日本の内側から見るとそう言いたくなる気持ちもわからないではありません。

では、こんなたとえはどうでしょうか。仮に、私が会社を経営しているとします。激動の業界は競争が激しく、ぼんやりしていてはもっと規模の大きい同業他社から買収されてしまうかもしれません。私は自分の会社の規模を拡大しようと小規模の会社を力ずくで乗っ取り、その会社の資産を奪い、抵抗したその会社の従業員を殺したり暴行を加えたりしました。私は自分の会社が生き残るためにはしかたなかった、と主張したとして、第三者から私の主張は認められるでしょうか？認められないと思います。私の利益のことしか考えていない自分勝手な理屈だからです。

＞少なくとも自分は、当時の「欧米列強の植民地にはなりたくない」と考え行動してきた日本人を、誇りに思いますし、感謝します。

欧米列強の植民地にはなりたくないからといって、周囲のアジア諸国を植民地にしようとしたのが日本です。あまりほめられないと思います。少なくとも自分は、そのような当時の日本の行動を誇りに思うことはできません。何とか国力を拡大しようとしたのだと思いますが、残念ながらその方法は間違っていた、そう思います。

すでに何十年も前に終わったことをなかったことにすることはできませんが、当時の日本が周辺諸国とその人々をたいへんに傷つけた、そのことを私は覚えていたいと思うし、そのことを正当化することはしません。

＞もちろん反省する所は、しないといけないでしょうが・・・。　
　
このように書きながら「何をどのように」反省するか書いていらっしゃらないのが残念ですが...。

自分のことをできるだけ美しい存在であってほしいというのは人情ですが、外部の他者から見た自分は違うように見える、そのことを私は忘れないでいるつもりです。

内部からの視点、外部からの視点、両方に思いをはせることはできると思います。日本の私はこう思う、だけど、外部から見たらああ思うのだろうなあ、と。

当時の日本についてあなたが感じる誇りを捨てよ、とは申しません。でも、第三者から見たら、あるいはアジア諸国から見たら別の見方がある、そこに思いをはせていただくことだけお願いしてよろしいでしょうか。

コメントありがとうございました。私も改めて自分の思いを別の言葉にすることができてよかったです。あなたを納得させることはできなかったかもしれません。でも、私も自分の思いを守ります。確信をもって。

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