省と庁の違い

自衛隊が平和運動に圧力をかけるかのように（あるいは、実際に圧力をかけるために）沖縄の辺野古に派遣される件に関連して、2007年1月9日に私の前のブログに書いておいた防衛庁と防衛省の違いに関する内容をもう一度再掲載しておきます。

自衛隊のこのような使われ方を本当に国民は望んでいるのかどうか。防衛庁が防衛省になることによって自衛隊のこのような使い方が増えるのではないか。

自律的主権者として、ぼんやりしてはいられません。丸腰の平和運動が自衛隊によって鎮圧されるなら、それは日本の国民が自衛隊によって守られることはないということと同じことになるでしょう。

防衛庁を防衛省にしたのは正しかったのかどうか。


以下2007年1月9日の記事を自己転載

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今日、防衛庁が防衛省になりました。行政機関としての防衛省が脱線しないよう、主権者で納税者の国民がさらに注意深く政治と行政を監視すべきであるという自覚を忘れないために、私自身のメモとしても、ここに書いておきます。

庁と省の違い。まず、省と庁を定義した法律ではこうなっています。

「省は、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。」（国家行政組織法第3条3項）

「内閣府には、その外局として、委員会及び庁を置くことができる。」（内閣府設置法第49条）

つまり、内閣に属する内閣府の外局から、内閣の直接下に属する省になったわけで、これは行政的な地位の向上を意味します。

具体的には、今までの「防衛庁」では予算要求や政策決定などについての提案や要求について、内閣府を通して閣議などにはかっていたのに対して、これからの「防衛省」では「防衛大臣」が予算要求や法案提出を単独で閣議にはかることができるようになるわけです。

別の見方をするなら、内閣府の長である首相から防衛省に権限が移り、シビリアンコントロール（文民統制）のハードルが一つ下がったことになります。

それに加えて、ＰＫＯ（Peace Keeping Operation。「国連平和維持活動」という訳語が流布していますが、「平和維持作戦」でしょう）など海外での活動を自衛隊の「本来任務」に位置付けることも決められました。日本の「自衛」に関係ない紛争でアメリカ軍と一体化して海外に軍事展開し、自衛という本来の目的を逸脱する危険性が高まったとも言えます。自衛隊の海外派遣には国会の承認もいらなくなるわけですから。

そのような「改定」を国民の多くは本当にいますぐ望んでいたのでしょうか？そもそも、これだけのことが国民に正しく理解されていたのでしょうか？

私には疑問です。そうでなければ、「庁と省の違い」というキーワード検索でこの小さな秘書課にたどり着く人がこんなに多いわけがありません。（以前書いた、防衛庁の省昇格反対の記事にヒットしていたのだと思われます。）

日本の軍事行動が「専守防衛」の枠をはみ出て、第二次世界大戦の敗戦という自国にとっても周辺国にとっても大きな犠牲を払って得た「平和主義」を失い、国民が本当に望んでいない結果に絶対にならないように、今まで以上に政治と行政への注意深い監視を有権者、納税者のみなさんに呼びかけなければなりません。


追記
「五十嵐仁の転成仁語」の2007年1月9日、2007年1月10日の記事が痛快です。ぜひ一読をおすすめいたします。

また、元外交官の天木直人さんが再開したブログ「天木直人のブログ」の2007年1月10日の記事「防衛省昇格の真の犠牲者は自衛官だ」も、省昇格への安直な賛成論が別の角度から批判されています。こちらもぜひ一読をお願いいたします。