セーフティーネットの縮小とは、万一の時に保険金のおりない保険のようなもの。

　

ちょっと前ですが、生活保護というセーフティーネットを少しでも縮小したいという動きが指定都市市長会から出てきていることについての報道がありました。

セーフティーネットとは、国民・住民がそれぞれの担税力にしたがって税金を納め、その必要に応じて万一のときに扶助を受ける社会的な仕組みであると言えます。行政はその仕組みの事務局として、主権者であり納税者である国民の権利を守るために本来は働くべきですが、国民・住民の権利を制限するようなほかならぬ行政の側から圧力が高まっているということです。福祉や社会保障は行政からの恩恵ではなく、税金の再分配、納税を通じた相互扶助の仕組みであることを忘れるべきではなく、主権者であり納税者のために働かない立法、行政システムには存在意義がない、ということをまず言っておきたいと思います。

●asahi.com（朝日新聞社）
生活保護「働ける人は受給期限を」指定都市市長会が要望
http://www.asahi.com/politics/update/1020/TKY201010200318.html
2010年10月21日1時14分

　全国１９の政令指定市でつくる指定都市市長会（会長＝矢田立郎神戸市長）は２０日、民主党と厚生労働省に生活保護制度の抜本改正を要望した。働くことができる人の受給に期限を設けることや、過剰な受診を抑制するため医療費を一部自己負担にすることなどを求めた。
　雇用状況の悪化で生活保護を受ける人は急増。特に求職者が集まる都市部に集中している。今回の要望は、全国最多の保護世帯を抱える大阪市が中心となってまとめた。
　働くことが可能な人に対しては「集中的かつ強力な就労支援制度」の導入を提言。ボランティアや軽作業などのプログラムへの参加を義務づける。さらに３年あるいは５年で「自立に向けて最大限の努力を行ったか」を判断し保護を続けるかどうかを決める。
　また、「地域間の不公平」を是正するため、居住地が定まらない人の生活保護費は全額国が負担することも要望した。
　　　　◇
　指定都市市長会が期限付き保護を盛り込んだ生活保護法改正案を国に要望したことに対し、市民団体「生活保護問題対策全国会議」（代表幹事・尾藤廣喜弁護士）など１２団体は２０日、「失業者や低所得者を生活保護から排除する危険な構想」として、撤回を求める意見書を発表した。
　意見書は、米国で実施された５年限定の「有期保護」で元受給者らが貧困状態のまま放置された例を挙げ、日本で期限付き保護が実施された場合、「生活困窮者はたちまち生存の危機にひんする」としている。

（転載ここまで）

「過剰な受診を抑制」とか、「自立に向けて最大限の努力を行ったかを判断」とか、もっともらしいことのように聞こえますが、現実にどのような「過剰な受診」があるのか、現実に「自立に向けて努力がおこなわれていない」という例としてどのようなものがあるのか、それらはどのくらいの金額にのぼるのか、そして、そのような締め付けによって苦境におちいる人がいないかどうか、そのような視点を行政側は持っているでしょうか。

その視点から、「労働組合ってなにするところ？」のみどりさんが書いていますので、紹介させていただきます。労働組合などの共同取材機関の新聞、「連合通信・隔日版」から、反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長の、「日本では他の社会保障が貧弱なため生活保護でカバーする範囲が広すぎる」、「（生活保護の）手前で止める努力をせずに生活保護を縮小したら、何によっても救われない人が出てしまう」という指摘などを引用した上で、こう書いています。

●労働組合ってなにするところ？
生活保護「期限付き」に異議あり！　市民団体などが院内集会（連合通信・隔日版）
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10704872138.html
2010年11月12日 18時34分07秒

（前略）
省略した部分は生活保護受給者である方々の発言が書かれています。

就職活動が難航している現状、持病があって重労働ができないために医療費自己負担が発生すると生活できないし、生活保護を有期にすることは合理性もないという主張などが書かれています。

就労支援は大いにやるべきでしょうが、３～５年のうちに就職できなければ生活保護が打ち切られて無一文になるという脅迫のようなやり方で追い立てるのは、やはり生存権、憲法２５条をないがしろにしたやり方だと思います。

そもそも、就職できたからと言って生活保護基準以上の収入が得られるかどうかもわからないのが今の世の中です。

何かで読んだ記憶があるのですが、日本は他の先進国と比較すると、生活保護を受けている人の中に働いている人の割合が高いそうです。つまり、働いても生活保護基準に満たない収入しか得られないため、その差額を生活保護として受給している状態にあるということです。

実際、埼玉県の非常勤講師の方で、その収入だけでは生活できないのでダブルワークで夜に働いていて、体力的にも続けていけないし、教育の仕事が疎かになってしまうのは避けたいという理由で、非常勤講師をしながら生活保護を受けているという方もいます。

日本の最低賃金は、平成２２年度の平均が７３０円、最高でも東京都の８２１円に過ぎません。この最低賃金がまともに生活できるレベルに引き上げられないうちは、就労支援をするから生活保護を打ち切っていいとは言えないと思います。

医療費の自己負担については、そもそもどんな経済状態の人であっても無くすべきだというのが私の基本的な考えです。経済状況によって病気になるならないを選らずことはできないのですから。医療費は保険料と税金からの負担で賄えばいいのです。医療を受けるのは”益”ではなく、人が生きていくための最低限の必要を満たすことなのですから、自己負担は不必要だと思います。

財政状況から、すぐにはすべての人の医療費自己負担がゼロにはならないにしても、今現在負担のない人に負担を拡大することは必要ありません。社会の進歩に反しています。

そもそも社会保障は、経済状況によって生きるために最低限必要なものが左右されないようにするための制度なのですが、払える見込みのない自己負担を設定するべきではないと思います。自己負担を計算に入れない制度の仕組みをつくるべきです。

生活保護費を全額国庫負担にすることには賛成です。

そうなれば、財政的に厳しい自治体が「水際作戦」や「硫黄島作戦」によって生活保護申請希望者や生活保護受給者に不当な対応をすることはなくなるでしょう。

そうした財政上の締め付けがなければ、ケースワーカーも本来の自立支援という役割を果たすことができるでしょう。

自治体の責任をどんどんなくしていってしまうというのは方向性は問題だと思いますが。

（引用ここまで）

生活保護や公的医療保険の縮小「だけ」を強調することがいかに偏ったものであり生存権への一方的な威嚇であるかがわかっていただけると思います。

ここで、ずっと健康で高収入の地位にある人は、「やはり生活保護や公的医療保険に無制限に私の税金が使われてほしくない」と考える人がいるのかもしれません。しかし、そもそも、生活保護であれ公的医療保険であれ、なんの歯止めも基準もなく垂れ流されているわけでもないというのがまず第一点。

そして、第二点は、保険という仕組みや相互扶助という仕組みはそもそもそのようなものであるということです。たとえば旅行のときにかける盗難保険・事故保険。旅行前に保険に入って、「私は保険にはいったのにずっと盗難も事故なく旅行を終えたから損をした。盗難や事故にあって保険金を得た人はずるい」などと考える人はいないですね。生活保母や公的医療保険も、基本の仕組みはそれと同じことなのです。

ということで、指定都市市長会の思惑に疑問を呈するとともに、「セーフティーネットの縮小とは、万一の時に給付のない保険と同じく、無意味である」ということを改めて強調したいと思います。



↑『たかしズム「ネトウヨ、バカウヨ、ネット右翼、恥さらし、売国奴、日本の恥」を語るための、たかしのブログ』さん作。税制についての当秘書課の記事は、「カテゴリ : 税制、税金、財政」から。

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身近な一歩が社会を変えるきまぐれな日々の中でそこに存在する良き人生と生活への切実な望みを民主党にわからせるために、低気温のエクスタシーの中のアブナイ日本が壊れる前に、生まれてきて良かったと感じられる社会にしたいけどとりあえずどうしたらいいかkimeraれない人の役にたちたくて、イル・サンジェルマンの散歩道のくろすろーどにあるアダージォな午後のカフェの窓辺でお茶にクリーム入れながら世界の片隅で税制についてのニュースや広島瀬戸内新聞やマスコミに載らない海外記事や虹の日記やフランス語の練習帳や「ユニオン」と「労働ニュース」のアーカイブを読んで、消費税と社会保障と国家予算についての『知られざる真実』を1947年教育基本法の理念の今日行く審議会とスーパー小論文ハイスクールとアジア連帯講座と内田樹の研究室で超左翼おじさんに学んで、大脇道場と言ノ葉工房と内田樹の研究室とカナダde日本語を学んだ後で、労働組合ってなにするところだろうとか、どうしたら戸倉多香子さんや保坂展人さんのためにみんななかよく団結は力ですくらむ組んで多世代交流のブログ広場の多文化・多民族・多国籍社会で「人として」転がるひよこ豆のように情報流通を促進できるかとか、明日も晴れの空と風と、月と、星のもとで白砂青松の雪裏の梅花やブーゲンビリアや古い寺を多く見て日常で思った事、感じた事をつらつら好き勝手に書きながら国会議員定数削減・比例削減に反対するInternet Zoneのサイバー政治団体秘書がはげしく学び　はげしく遊ぶおしごと日誌。
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