借金させていただくために無報酬労働奉仕を強制される国、日本。（んげ。）

　

想像してください。

あなたが自分でやっている事業のために銀行に融資を頼みに行ったとします。どこの銀行でもいいのですが、たとえば「新銀行東京」にしておきましょうか。笑

あなた：　「私の事業のために、融資を受けたいのですが。これが審査用の書類です」

銀行：　「（書類を見ながら）なるほどなるほど。保証人、連帯保証人、確かに記入してありますね。なるほどなるほど。あなたの経歴、今の財務状況はわかりました。お金はお貸ししますが、当行の資金は税金です。税金であなたに融資するのですから、それなりの覚悟をもっていただかなければなりません。つきましては、社会貢献活動への参加をしていただきます。」

あなた：　「は？」

銀行：　「聞こえませんでしたか？社会貢献活動です。税金からお金を借りるんでしょう？あなたは税金から受益をするのですから、社会還元の意識を持っていただかなければなりません。週xxx時間、社会貢献活動として、無料で働いていただきます。」

あなた：　「私はお金をもらいにきたのではなくて、借りに来たのですが？」

銀行：　「ですから、あなたの事業を回すためにあなたは税金からお金を借りる。あなたは公費を使うのですから、公費に感謝する心をあなたに根付かせるためにも、社会貢献活動をしていただくんです。」

あなた：　「（独り言：何言ってんだコイツ？）えーと、私は借金をして自分の仕事をするわけです。最近はお客さんの所得も減っていて、個人消費も減ってきて、会社を回していくのもたいへんなんですよ。私は必死で仕事をしているんですよ。その社会貢献活動をする時間はとれないと思うのですが。それに、その社会貢献活動のために自分の仕事をする時間がなくなって事業がうまくいかなくなったら、どうするんですか。」

銀行：　「お客さんの所得も減っているとか、個人消費も減ってきているとか、私は企業経営者ではないのでそういう難しいことはわかりません。私に言えることは、このお金は税金なのですから、あなたに何が起ころうと必ず返していただかなければいけないということです。そういう公費に感謝する心をあなたに根付かせるためにも、社会貢献活動をしていただくんです。」

あなた：　「（絶句）」

…こんな異様な政策を、まだ社会に出ていない、しかももともと貧しい家庭出身の学生にお文部科学省様が強制しようとしています。

●YOMIURI ONLINE（読売新聞）
奨学金の条件「社会貢献活動への参加」追加へ
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101021-OYT1T00027.htm
2010年10月21日

　文部科学省は、国費を財源とする無利子奨学金の貸与を大学生らが受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた。

　来年度から貸与者らに文書で呼びかけを開始し、周知期間をおいて数年後の条件化を目指す。社会貢献活動の場の提供に積極的な大学にも補助金などを上乗せする方針。同省は、公費で学ぶ学生に社会還元の意識を根付かせたいとしている。

　文科省によると、短大を含む大学生らに対する学費などの支援は、独立行政法人「日本学生支援機構」が大学を通じ貸与する有利子や無利子の奨学金と、各大学による授業料減免があり、奨学金全体の３割弱にあたる無利子奨学金（２０１０年度約２５４９億円、３５万人）と授業料減免（同約２３６億円、７万人）の財源には国費があてられている。

（2010年10月21日07時59分 読売新聞）

（転載ここまで）

当然、するどいツッコミがはいっています。たとえばこちらを見てください。

●Togetter
「奨学金の条件に社会貢献活動」への批判
http://togetter.com/li/61439

●はてなブックマーク
Togetter - 「「奨学金の条件に社会貢献活動」への批判」
http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/61439

これら二つから適当にいくつか抜き書きしてみましょう。発言者の名前はリンク先で見てください。引用させていただいた方、すみません。

ビンボー人には社会貢献を強要するのだね。

せんせー！　金持ちの子は社会貢献しなくていいんですかー。どうしてですかー。

ただでさえ学生が就活で苦労しているところを間近で見ているだけに、この話にはほんとうに怒りを覚える。終わってる。ほんとにこの国は終わってる。　「貸与したうえに強制労働」

もっと最悪なのは、こんなもんどうせ補助金目当てで無意味なボランティアを大学が組織して、現場にぜんぜん役に立たないことを形式的にやるだけに終わるってことなんだよなー

公費で大学通う人間に社会貢献しろというなら、公費でメシ食ってる人も社会貢献しろよ。

奨学金やその支給基準や返済の話は（個別には重大だけど）ほんとに瑣末の話。そもそも高等教育の学費がこんなに高い国は世界でも珍しい，そのことが解決しないと同じことの繰り返し。

世界の先進国の大多数では大学の学費は無料か，有料でも学生がバイトすれば充分に払える額。「やり直しできない」のは学費が高いせいでもある。

どちらかというと社会貢献活動を課されるべきなのは苦労を知らずに育った層、つまり奨学金を「利用しなかった者」ではないか

借金&強制労働?/遥かな昔、新聞奨学生が過労死したという記事を読んだような気が。子どものとき「脆弱な貧乏人は○ね」というメッセージだと理解したぞ、儂。

背景には、「大学での学びは社会にとって意味が無い」という考えが広まっていることがあるんだろうな、と思う。

学生ローンが焦げ付いたことの対策なんだろうな。しかし陰険なやり口だね。

なんでこういう話がおしすすめられるのかわかんない… 官僚ってみんな坊ちゃん育ちなんかの… / 有利子奨学金受給者だからこそ憤慨してる一人

（引用ここまで）

そもそも、「貸与型奨学金制度」は高等教育と日本の未来を空洞化させる制度であり、お政府様による学生相手の貧困ビジネスであり、貧しい人が学ぶ権利をさらに狭める制度であると言えます。次の記事などで書きました。

■奨学金制度も「貧困ビジネス」に成り下がったのでしょうか
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1034.html

■「貸与型奨学金制度」が高等教育と日本の未来を空洞化させる。　（「社会科学者の時評」ブログを読んで）
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1705.html

さらに、高校の先生で、ブログ「ssh-スーパー小論文ハイスクール」をやっているshiraさんが、コメント欄で的確に言ってくださっています。

http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1705.html#comment10181

[C10181] 貸した奨学金は返らない

　奨学金の貸与システムに関しては何百回でも同じことを繰り返し書きますけど、貸した奨学金は返らない、と考えるべきなのです。
　なぜか？それは貸した相手が貧乏人の小せがれや小娘だから。
　貸与奨学金がシステムとして回ったのは、カネを借りて高校や大学に行けば、その後の仕事は保証されたからです。しかし今はそういう保証はなくなりました。貸与奨学金は単なる融資でしかありません。
　奨学金はビジネスには決してなり得ません。カネを貸すことをビジネスと考えれば、貧乏人の小せがれや小娘は最低の顧客です。だって貧乏なのだから。カネを貸すのなら、一番いいのは必ず返してくれる人、例えば金持ちのお坊ちゃまやお嬢さまです。
　奨学金は、決して「官から民へ」移譲してはならない分野だったのです。貧乏人に率先してカネを渡すというのは、福祉国家として「官」がやらねばならない責務なんです。
2010-04-10
投稿者 : shira

（転載ここまで）

親が金持ちだったから有名大学に行けて官僚になれるチャンスが広がったお坊ちゃまたちが、生まれながらの貧乏人に説教するような、世界的に見ても非常識な制度です。世界中ほとんどの国では高等教育まで無料か個人負担が少ないようになっていて支給制の奨学金だってあるのに、教育費を借りるのに「社会貢献活動への参加」というただ働きを強制するこの新しい制度は、日本の子どもたちの未来が暗いことをよく示していると思います。ただ働きまでして教育費を借りても、安定した仕事に就けるチャンスはどんどん少なくなっているというのに。

こんな制度の実現は阻止しなければいけないと思います。次のような記事を読むとなおさらそう思います。

●琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
学ぶ意欲に暗い影　奨学金利用と返還猶予最多
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-168488-storytopic-7.html
2010年10月7日

　意欲がありながら経済的な理由で就学が困難な高校生に奨学金を無利子で貸与する県国際交流・人材育成財団（仲村守和理事長）の２事業の２００９年度利用総数が過去最多に上った。全奨学金事業における返還猶予申請件数も過去最多。厳しい経済事情が高校生の学びに影を落とし、雇用情勢の悪化で奨学金の返済もままならない実態が映し出されている。（佐藤ひろこ）

　県国際交流・人材育成財団の全奨学金事業における返還対象者のうち、２００９年度に進学や病気、失業などにより返還猶予を申請した件数が、前年度比２１６件増の７８６件と３８％増加している。
　返還猶予の申請件数は、０５年度１１５件、０６年度１４９件、０７年度１７２件、０８年度５７０件と年々増加している。０８年度の急増は、０５年度に移管された高校育英貸与奨学金の返還が本格化したことが要因。求人数の減や非正規雇用の増など、厳しい雇用情勢の下、奨学金を返済できない人が増えている。
　一方、０９年度の返還率は、前年度より４・６７ポイント増の７９・３２％と上がり、滞納額も約７９０万円減少。同財団は「１カ月の滞納から速やかに通知するなど、債権管理規定に基づき督促を進めた結果」と話す。
　同財団は０９年６月、返済能力がありながら滞納している返還者に対し、給与の差し押さえなど法的措置を盛り込んだ債権管理規定を施行した。差し押さえは執行されていないが、従来３カ月以上の滞納者に送っていた督促状を、１カ月から送付。３カ月以上の滞納者には、保証人と連帯保証人にも通知するなど、より細かく督促作業を進めている。

（転載ここまで）

とにかく、日本の奨学金政策は単なる貧困ビジネスとなっていることがよくわかります。大人が子どもにたかる制度、とも言えるでしょうか。

ついでに、奨学金を借りるときには保証人や連帯保証人をたてますが、この連帯保証人という「制度」、借りた本人と同じ責任を負い、責任も非常に重く、欧米にはない異常な制度と言われています。（たとえば、こちらの記事でそのような説明をしている本が紹介されています。）

教育費が無料の国がたくさんあり、支給型の奨学金もある国がたくさんあるというのに、日本というのはなんとけちくさい国なのでしょう。


追記。「教育の受益者は個人ではなくて社会集団全体であり、だからこそ教育は全面的に公的に支援されるべきものである。教育機会を自己利益の追求に読み替えてはならない。」と改めて主張するこちらの記事もぜひ。

●内田樹の研究室
教育のコストは誰が負担するのか？
http://blog.tatsuru.com/2010/10/22_1013.php


さらに追記。
この記事を、共感をこめて次の記事にトラックバックします。

●あそぶログ
奨学金残酷物語
http://d.hatena.ne.jp/asobitarian/20120427/1335538763
2012-04-27





↑『たかしズム「ネトウヨ、バカウヨ、ネット右翼、恥さらし、売国奴、日本の恥」を語るための、たかしのブログ』さん作。税制についての当秘書課の記事は、「カテゴリ : 税制、税金、財政」から。

築地市場の豊洲移転に反対して食の安全を守りたい。
●Like a rolling bean (new) 出来事録
■2010-10-20
現代ビジネスの必読記事：『都知事選の争点となる「築地移転」で浮上した「債券回収会社」のカラクリ』
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10682012491.html

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身近な一歩が社会を変えるきまぐれな日々の中でそこに存在する良き人生と生活への切実な望みを民主党にわからせるために、低気温のエクスタシーの中のアブナイ日本が壊れる前に、生まれてきて良かったと感じられる社会にしたいけどとりあえずどうしたらいいかkimeraれない人の役にたちたくて、イル・サンジェルマンの散歩道のアダージォな午後のカフェの窓辺でお茶にクリーム入れながら世界の片隅で税制についてのニュースや広島瀬戸内新聞や虹の日記やフランス語の練習帳や「ユニオン」と「労働ニュース」のアーカイブを読んで、消費税と社会保障と国家予算についての『知られざる真実』を1947年教育基本法の理念の今日行く審議会とスーパー小論文ハイスクールとアジア連帯講座と内田樹の研究室で超左翼おじさんに学んで、大脇道場と言ノ葉工房と内田樹の研究室とカナダde日本語を学んだ後で、労働組合ってなにするところだろうとか、どうしたら戸倉多香子さんや保坂展人さんのためにみんななかよく団結は力ですくらむ組んで多世代交流のブログ広場の多文化・多民族・多国籍社会で「人として」転がるひよこ豆のように情報流通を促進できるかとか、明日も晴れの空と風と、月と、星のもとで白砂青松の雪裏の梅花やブーゲンビリアや古い寺を多く見て日常で思った事、感じた事をつらつら好き勝手に書きながら国会議員定数削減・比例削減に反対するInternet Zoneのサイバー政治団体秘書がはげしく学び　はげしく遊ぶおしごと日誌。
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