税滞納者への行政サービス制限への疑問

　

これは福島県での報道ですが、「税滞納者への行政サービス制限」という、見過ごしにできないニュースです。

税の滞納は、問題といえば問題でしょう。だけど、払うだけの余裕があるのに支払いを拒否している「悪質な」ケースと、本当に払う余裕がない（たとえば）貧困者のケースと、どれだけきちんと区別して対処しているのでしょうか。

「相談の場に出てもらう」のが狙い、と報道記事の中に書いてありますが、こんな間接的な手段で人々が「相談の場に出てくる」でしょうか？このような「行政的脅し」が、本当に払う余裕がない貧困者を追い込むことにならないと言えるのでしょうか？

●YOMIURI ONLINE（読売新聞）
税滞納者への行政サービス制限、各地で広がる
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100929-OYT1T00496.htm
2010年9月29日11時41分

　地方税の滞納を整理するため、悪質な滞納者に対して行政サービスを制限する条例を整備する動きが、福島県内自治体にも出始めた。

　全国で４０ほどの自治体が同様の条例を持つが、県内では葛尾村が昨年１２月、初めて条例を制定。今年３月に条例を制定した古殿町も１０月１日から施行する。一方、条例案を提出したものの、議会で否決されたケースもある。自治体には、滞納者に厳しく対処するという姿勢を示そうという狙いがあるが、適用基準の難しさがあるようだ。
　古殿町では、町民税や軽自動車税、国民健康保険税などの町税滞納額は増加傾向にあり、２００９年度決算で約７７００万円と、町税全体の約１７％を占める。これまでも、町発注の公共事業の入札資格で町税の完納を条件として付けるなどの対策をとってきたが、趣旨徹底のため条例化した。
　制限するサービスは、町営住宅の入居や子どもの誕生祝い金、奨学資金の貸付金など一般住民向けのほか、建設工事の入札など事業者向けのものも含めて計１９項目。当初の検討では３０項目あったが、乳幼児・児童医療費の免除など命にかかわるものは除外した。
　制限の対象となる滞納者は、〈１〉資力がありながら納税しない〈２〉正当な理由なしに督促や納税相談、町との連絡を拒む〈３〉そのほか納税に不誠実な行為がある――と規定。副町長がトップを務める「地方税等徴収対策本部」が、滞納者の収入や過去の納税実績などを基に、条例を適用するか判断する。現在、適用される可能性があるのは約３０世帯という。
　同町では「不景気で所得が減る中で追い打ちをかけるのかという声もあるが、滞納者の中には納税相談にも応じない人がいる。まずは相談の場に出てもらうのが狙い」（本郷清松・住民税務課長）としている。
　一方、県内でいち早く今年４月に条例を施行した葛尾村も、「住民の納税意識の醸成が目的」と説明するように、現時点で実際に条例を適用したケースはない。制限の対象は入札参加や町への物品納入など１０項目。ほとんどが事業者向けで一般住民への影響が少なく、議会の審議でも大きな反発は見られなかった。
　南会津町では３月議会で同様の条例案が反対１０、賛成９で否決された。同町の条例案は、制限するサービスに高齢者や障害者向けの福祉事業を掲げたほか、子育て支援や人間ドックの助成金など、古殿町や葛尾村の条例に比べて対象が広く、この点が条例の成否の分かれ目になったとみられる。
　採決前の討論で、反対派は〈１〉不誠実の定義があいまい〈２〉滞納には差し押さえの措置が既にあり、行政サービス制限は問題――とした。
　南会津町によると、増え続ける町税の滞納額は約２億８９００万円（０９年度決算）に上り、滞納整理は喫緊の課題。馬場増男・税務課長は「納税の誓約があれば『不誠実な滞納者』には該当せず、サービスも制限しないと説明してきたが、うまく伝わらなかった」と語る。同町では当面、再提案する予定はないという。
　こうした条例について、福島大の今井照教授（公共政策論）は「一種の脅しのようなものなら、本来の条例のあり方ではない。制定するなら、厳格な適用をしなければならず、どういう場合に条例を適用するのかの基準を明確にする必要がある」と指摘している。（三浦真）
（2010年9月29日11時41分 読売新聞）

（転載ここまで）

この報道記事の中に、南会津町の例が紹介されています。制限するサービスに高齢者や障害者向けの福祉事業を掲げたほか、子育て支援や人間ドックの助成金など、対象を広く条例案をつくったそうです。本当に支払う余裕がない貧困者をさらに苦しめるような内容としか思えません。否決されたのは幸いでしたが、悪質な納税拒否のケースを何とかするという理由であれ、それ以外の人々を巻き込むような方法は許されないと思います。

このような税滞納者への行政サービス制限が福島県だけではなくて全国で広がっているとして、それが本当に支払う余裕がない貧困者をさらに苦しめるような内容であるとしたら、それは大きな誤りだと思います。

このような報道をする報道機関にも注文があります。悪質な滞納者とは具体的になんなのか、しっかり取材をしてほしいと思います。



↑『たかしズム「ネトウヨ、バカウヨ、ネット右翼、恥さらし、売国奴、日本の恥」を語るための、たかしのブログ』さん作。税制についての当秘書課の記事は、「カテゴリ : 税制、税金、財政」から。

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