東京都下水道局ワッペン刷り直しへの批判の先にある落とし穴

東京都下水道局の「ワッペン刷り直し」で3400万円ほどが「無駄」になった件、「役人の頭の固さ」など、すべての人から批判が集まっています。

●毎日jp　2009年4月11日　12時10分
石原都知事：ワッペン作り直し…「くだらねえ完全主義だ」
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090411k0000e040034000c.html?link_id=RSH01

東京都下水道局が当初作ったワッペン（上）と内規に従って作り直したワッペン　東京都下水道局が新調した職員の作業服用のワッペンに、波線が描かれているのは「内規違反」だとして、同局が約３４００万円をかけて作り直していたことが分かった。

　細い線１本が原因で多額の公金が無駄になり、最初のデザインを決めた幹部２人が訓告処分を受けたが、あまりの「お役所仕事」ぶりに石原慎太郎知事は「くだらねえ完全主義だ。骨身にしみて反省させる」と憤慨。作り直しを決めた職員も処分する意向を示した。

　下水道局は今春、職員の作業着約２万着を一新。右胸につけるシリコーン製のワッペンを新たに縫い付けることにした。都のシンボルマークであるイチョウの横に局名を描き、その下に「水をきれいにする」というイメージを込めて、水色の波線（約５センチ）を加えたワッペンを考案した。

　だが昨年１１月、局内からシンボルマークの取り扱いを決めた内規「基本デザインマニュアル」に触れるとの指摘があった。内規には「（イチョウのシンボルマーク以外の）他の要素を加えない」との規定があり、同局も波線がこれにあたると判断。完成していた２万枚のワッペンを廃棄し、新たに３４００万円をかけてワッペンを作り直した。

　都は３月、最初のワッペンのデザインを決めた当時の部長と課長を訓告処分にした。下水道局は「作業服は長い間使っていくもの。基準に違反するものを使い続けるわけにはいかなかった」と説明している。【林哲平】

（引用ここまで）

ここでの問題は、都庁内の仕事の段取りや事前打ち合わせができていればよかったということ。それだけのこと。

たしかに無駄な出費です。

でも、誰もが同じように批判できる件というのは往々にして落とし穴がある、私はそう思っています。この件はどうでしょうか。

3400万円は確かに無駄遣いです。ですが、石原慎太郎都知事自身の数々の海外出張で「無駄遣い」が散々指摘されたことを私は覚えています。「ガラパゴス諸島出張」とか。

こちらに石原氏の海外出張の経費の一覧があります。2006年のイギリスとマン島への出張で3500万円がかかっています。ガラパゴス諸島出張は1444万円かかっています。資料のある15回分で合計2億4000万円がかかっているそうです。

新銀行東京はどうでしょう。累積赤字は数百億円あります。今回無駄遣いされた3400万円の千倍以上の金額が毀損の危機にあるのではないでしょうか。

築地市場の豊洲移転を石原氏は企んでいますが、いくらかかることやら。

オリンピック誘致のための費用。誘致できなければ無駄な出費となります。

「くだらねえ完全主義」といえば、全員起立させて君が代を斉唱させるために多くの学校に派遣している都職員や教育委員会、そして音量計にかかっている費用は？力ずくで全員起立させようとすることも「くだらねえ完全主義」ですよね。根津公子先生にパワハラを加えるためにかかっている人件費。「国旗を掲げ国歌を斉唱することで得られる教育的効果？」という記事で書いたとおり、お東京都様は教育的効果が全然わからない行為に時間とエネルギー（と費用）をつぎ込んでもいます。

たしかに3400万円は無駄でした。だけど、そのおかげで私はその数千倍の金額を石原都政が無駄にしていることを改めて思い出すことができました。私のこの記事を読んでくださった方も思い出しましたよね。今回3400万円を無駄にしたお東京都様の職員には感謝しなければなりません。爆

それと、役人の頭が「固い」と考えることによって、自分たちは役人とはちがって柔軟な判断力を持っている、と一般人は思うのかもしれません。しかし、そんな一般人にも「規則は規則」「職務命令は職務命令」と言いながら日の丸君が代への恭順を強制する考え方はあります。「起立しない人や歌わない人がいてもいいんじゃない？」と柔軟に考える一般人ばかりではありませんね。

また、かなり恣意的でその意義もはっきりしない、「スカートは膝上xxセンチ、とか前髪は眉の上xxセンチ」とかいう類の校則を理由もわからずに、「規則は規則」と言いながら必死に守らせようとする一方で、公務員がしたがうべき規則である日本国憲法を守らずに軽んじる政治家や中央官庁の高級官僚がおおぜいいるのもまた現実です。そのアンバランスさにも私は思いをはせます。

今回の3400万円の無駄遣いは、担当者たちが都庁の「内規」を気にしたことを理由の一つとしてなされたそうです。何が守るべき大原則で何が無意味な「規則」や「習慣」なのか、多くの人が見失っているのではないでしょうか。

多くの人が意味を考えずに「規則は規則」と言い続けたことの延長として、必然的に今回の3400万円の無駄遣いが発生した、そう私は思いました。

そのことをおおぜいの政治家や役人や一般人が思い出し、記憶を新たにすることができるのなら、今回の3400万円は無駄ではなかった、といえるでしょう。爆

しかし、今回の件を「役人の頭の固さ」を言って批判するだけで一般の人が満足するなら、上に書いたように、そこには落とし穴がある、と私は思うのです。

もっと多額の金額が無駄にされた、あるいはされようとしていることを忘れてしまうという落とし穴。

意味を問わずに「規則に従う」ことだけを習慣にする結果の失敗という落とし穴。

築地市場の豊洲移転に反対して食の安全を守りたい。
●Like a rolling bean (new) 出来事録
■2009-04-12　4月14日の築地勉強会詳報転載（付記：築地官製地上げと依然一体化するオリンピック招致計画）
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10240951881.html

■2009-04-13　イシハラ都政らしい豊洲新市場担当部長人事（もう、「皆様の安全」どころではないのでしょう）
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10241233443.html

■2009-04-14　どのようにして都が、豊洲新市場の軟弱地盤を「有識者」にも伏せてきたかを示す記録
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10242158273.html

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