村野瀬玲奈の秘書課広報室

　第二次世界大戦は民主主義国（＝人権を重視した国）と枢軸国（＝人権を無視した国）との戦いだったと言われます。だからこそ，日本が敗戦になったときアメリカを初めとする連合国側は，日本に徹底的な民主化・人権保障を求めた訳です。人権を保障・重視しない国は戦争に向かう，これが２０世紀の大きな教訓だと思います。つまり戦争に向かわせないためには人権保障が絶対に必要になります。

　ところでハンナ・アーレントは『全体主義の起原３』の中で，全体主義に向かった国（＝人権を保障・重視しない国）は，ドイツやソ連といった人口が多かったところであると述べています。人口が多いから，少しくらい人口を減らしても差支えないといったところでしょうか。ソ連が人為的に起こした飢餓（＝集団農場の強引な設置）によりウクライナでは８００万人の死者が出ました。アーレントは，中国やインドなどではキリスト教に基づく人権思想を発展させる土壌がなかったこと，人口が非常に多かったことをあげています。毛沢東が戦後日本人にインタビューされた際，莫大な人数の犠牲者が出てさぞやご心痛でしょうと聞かれ，「いや，中国の人口に比べればたいしたことはなかったですよ」と答えたそうです。帝国日本軍は広大な中国国土と殲滅してもまた湧き出てくる中国兵・民衆を相手に戦ったのですから，時間が経過するにつれてますます泥沼にはまったと思います。神が人を「存在することを喜ばれるものとして造られた」（創世記）という聖書の記述があるほか，キリスト教的人間観が中世ヨーロッパでカルヴァンが抵抗権を主張する下地になり，宗教弾圧を受けていたピューリタンの信教の自由を守る運動と人権の法制化につながり，アメリカ独立宣言で法整備されたという経緯があります。
　帝国日本は戦前の人口は7,500万人ほどだったと言われます。決して人口が多い訳ではなかったと思いますが，兵士の命は赤紙一枚・一銭五厘だったと言われるほど安かったわけです。神風特攻隊により敵艦に激突して兵士の命を落とすという戦術はやはり生命の軽視にあったのでしょう。ドイツの有名な女性パイロットのハンナ・ライチュがヒトラーに，「ドイツもあのような戦術を取るべきです」と進言したものの，ヒトラーはドイツの国柄・人情に合わないとして却下したそうです。ヒトラーであってもユダヤ民族は浄化されるべきであっても，ドイツ民族はむやみに命を落とさせるべきではないというキリスト教的世界観を持っていたのでしょうか。なお戦争末期になると，「ヒトラーは怒ると床をころがりカーペットを嚙みちぎるなど周囲が不安になるほど病んでいた」とのことです。
　中国が残忍な死刑を考案し，今に至るまで廃止できないのは膨大な人口と関係があるように思います。「ひとりひとりがかけがえのない存在」という考えが起きにくいのかも知れません。朝鮮民主主義人民共和国は人口が多い訳ではありませんが，朝鮮戦争・朝鮮半島の分断といった歴史的事情によって成立した社会主義国→全体主義国家なので，少し事情が異なるのかも知れません。

「人権」教育は本来、学校教育の重要な柱のひとつのはずですが、人権後進国・日本ではそうなっていないのかと…
人権教育を軽視(ex.「日本は単一民族国家」by 中曽根)、(特に)日本会議等ネトウヨ(レヴェルの輩)達が支えたアベ１・２次政権以降無視・拒否し続けてきた結果、この社会に分断をうみ、差別意識を圧し付けてきた、長年の自民党独断政治の副作用・後遺症による、疲弊・崩壊が一気に噴出したのが、現在の状況ですよね。

保守権力＝財界主導の、教育の隷属政策の惨たらしさの象徴が「教育の貴族化」！
「進学塾」といういう反動的無免許無許可(！)反民主的私塾がカビのように全国に蔓延っている…（私の住む田舎でも林立状態…）（＝教育産業！＝財界！！という盗賊←長年、自民党がその手先となってます(怒)）
((自由人権規約の)ようやく保留を撤回した)日本の「教育の無償化」はいつになったら実現するのか…
(学校のランク付けも解消しないといけないです)

（コロナ過で、あしなが育英会にオンラインで寄付した時に、コメントで「先行世代として、教育の無償化ができなかったことを恥ずかしく思う」というようなことを書き込みました。本当に忸怩たる思いでいっぱいで仕方がないです…

「人権」でトピズレしてしまいました…すみません
でも、やはりこどもたちに「人権」を教えるのは教育以外にないはずです。
学校では「起業」「投機」「プログラミング」より「基本的人権」「権利」教育が欠けていますよね。特に労働者の権利等様々な「権利」があり、主張していいのだ、というを教えなければなりません。
（労働者の権利を知る事は、雇用者側にこそ必須なことでもあります！）

　もう10年前になりますが，プラスティネーションという製法で作られた人体標本の展示展「人体の不思議展」が全国36ヶ所の都市を巡回して開催されました。私は見に行きませんでしたが，当時はテレビや新聞などで大々的に宣伝されていました。650万人が見たとされています。展示されたのはすべて人の死体を利用しました。全身標本は皮膚をはぎ取られ，筋肉をむき出しにした状態で弓やアーチェリーを引かせられたり，前方の標本の肩に手を置いて列を組んで並ばされていたそうです。ドイツのアウグスブルクの展示では，性行為中の男女の標本が展示され，地方当局は行政命令を出して作品を見えにくくさせるべくカバーをかけさせてそうです。
　「人体の不思議展」では，入場料を徴収し，キーホルダーやストラップなどの関連グッズが販売されました。京都展での入場料は大人1500円，中高生700円，小学生400円だったそうです。仮に一人平均1000円だったとして合計65億円の売り上げがあったことになります。「若い女性たちは，きゃっきゃっといいながら死体のお尻を触り，脳をボールのように持ち上げ，骸骨の模型とプリクラをとっていた」（大阪展）。
　死体には尊厳があるので，本来はモノとして利用の対象にはできません。仮に許される場合があるとしたら，それは人類の幸福や福祉に資するという理由があってこそはじめて可能になります。医学・歯学の解剖学的な教育・研究のために自分の遺体を提供することを献体といいます。展示ではこの献体という言葉が標本の正当性の根拠とされました。しかしながら，献体とは医学教育と研究用に提供された遺体のことであり，一般展示および商業目的の利用は想定されていません。教育・研究のための献体を一般展示のために流用することは，同意の拡大解釈であり，営利目的に使用することも契約違反になります。胎児・新生児・幼児の標本については，彼・彼女たちの「生前の意思」を確認することは不可能です。
　人体の不思議展実行委員会は日本解剖学会に協賛を要請しました。学会は協賛はしないが，個人的にボランティアやアルバイトとして協力するのは差支えないとしました。金沢大学医学部解剖学講座の教員が解説員として展示に協力していたところ，金沢大学しらゆり会の会員十数名が不快感を表明して脱退するという事件が起きました。自分たちは医学・歯学教育のために死後解剖体として提供されることに同意はするが，営利目的にのために一般大衆に遺体をされされたくないという不快感でした。
　人体の不思議展は，日本赤十字社，日本医学会，日本医師会，日本歯科医師会，日本看護協会の後援を受けていました。2,004年当時の監修委員会のメンバーには，委員長として森亘　日本医学会会長，織田敏次　東京大学名誉教授が，委員には井村裕夫　科学技術会議議員，高久史麿　自治医科大学学長，矢崎義雄　国立国際医療センター総長，増田寛次　日赤医療センター院長，養老孟司　東京大学名誉教授，後藤昇　昭和大学教授，南裕子　日本看護協会会長などが名を連ねました。
　仙台展では河北新報社が共催となり，「遺体は中国・南京大学の研究施設から貸与されたもので，生前に献体登録を受けている」と記事にしました。ところが実際は，第一に南京大学が展示への関与を否定し無断名義使用について抗議していて，第二に標本は貸与ではなく南京蘇芸生物保存実験工場から購入したものであり，第三に献体であることを裏付ける証拠は一切ありませんでした。
　京都展開催中，京都工芸繊維大学名誉教授の宗川吉汪さんは展示開催により精神的苦痛を受けたとして，人体の不思議展実行委員会を相手取った損害賠償請求訴訟（請求額1万円，代理人弁護士の報酬なし）を起こしました。「人の死体に対しては，礼意をもって接する，死体の尊厳を守る，これは基本的な公序良俗に属することがらです」，「問題点は遺体を営利目的に展示することです」と第１回口頭弁論で宗川さんは指摘しました。2012年2月16日の判決では，権利侵害は認められず，請求は棄却されました。しかしながら展示の非倫理性が世論の議論となり，日本医師会内部からも批判が出るようになり，2012年3月をもって人体の不思議展は閉鎖されるに至りました。
　なお，プラ標本の考案者であるハーゲンスは2010年10月に，人体をインターネットで販売を開始したと報じられました。全身標本が約70000ユーロ（約790万円）だったそうです。

　以上の内容は，『死体は見世物か「人体の不思議展」をめぐって』（末永恵子/大月書店）から引用しました。すでに過去のできごととはいえ，死体が営利目的のために，美辞麗句で粉飾され，尊厳を犯された事例があったことは記憶しておいてよいのではないかと思います。さらに死体が売買の対象となり，死体が中国人であったことから差別を生みかねなかったこと，死体の供給源は死刑囚だった可能性が髙かったことも大きな問題でした。