
『
国民から「国民主権」を奪う「秘密保全法」』という共通タイトルの記事です。
自民とみんなの党と維新の会との密室での「特定秘密保護法」と政府が呼びたがる「不特定秘密隠ぺい法」の修正協議についての批判、あるいは反対運動についての案内は(うちでもいくつか紹介したほか)、
新聞社説や他の方々のツイッターやブログで読んでいただくことにして...。
毎日新聞にあった、山田孝男氏のコラムを読んで、納得できないところが多かったので記事にしておきます。
外交や国際政治の前提として、次のことをまず頭におきたいと思います。A国政府とA国国民、B国政府とB国国民があるとします。A国政府とB国政府は常に抗争を繰り広げる敵同士とはいえませんし、ましてやA国国民とB国国民が敵同士なのでもありません。両国政府、両国民とも、摩擦はありながらも共存していかなければなりません。下に紹介する山田隆男氏の論じ方は、「敵味方の関係」をあまりにも固定化、単純化しすぎです。そして、「秘密」とはなんなのか、「保護」とはなんなのかについてもあまりにも単純化しすぎです。
今までのうちの記事でも何度か指摘してきましたが、A国政府がA国民を犯罪者扱いし敵視するというのがこの「特定秘密保護法案」の前提です。それに目を向けない「国家秘密」論は国民を弾圧する力の後押しになります。この山田氏の記事は、毎日新聞の特定秘密保護法案反対の良い仕事を大部分無効にするような暴論だと思いました。
少し前の記事、『
プライバシー侵害「調査」についての元自衛官の証言 (国民から「国民主権」を奪う「秘密保全法」 (メモ) (117))』で自衛隊周辺のプライバシー侵害の例を報じた赤旗の記事を紹介しましたが、この山田記者の記事は、そのような異様な国家や政府組織による国民監視を警戒する視点が全くといっていいほどありません。「敵に漏れれば国の安全が脅かされる情報を、国が秘密にするのは当然のことである。」という単純化に議論を集中させることは、たとえ秘密の存在を認めたとしても、議論の材料選び、議論の運び方として不十分、不適切なのです。
では、その山田氏のコラムを読んでみましょう。
●毎日jp(毎日新聞)
風知草:秘密との、つき合い方=山田孝男
http://mainichi.jp/shimen/news/20131118ddm003070070000c.html
http://mainichi.jp/shimen/news/20131118ddm003070070000c2.html
毎日新聞 2013年11月18日 東京朝刊
敵に漏れれば国の安全が脅かされる情報を、国が秘密にするのは当然のことである。国を守るため、情報漏れの処罰法を整えるという政府の意図が本質的に暗黒だとは思わない。
政府が特定秘密保護法案の成立を急ぐ理由の一端は、第1次安倍内閣の2007年に起きたイージス艦情報漏れ事件にある。出入国管理法違反容疑で神奈川県警に逮捕された中国人の女性(当時33歳)宅からイージス艦の構造図面、レーダーの捕捉距離など最高度の機密を含む外付けハードディスクが見つかった。
イージス艦は強力なレーダーとミサイルで同時多発の敵襲を迎え撃つ高性能の護衛艦だ。イージス(Aegis)はギリシャ神話に登場する神の盾。米海軍にあっては空母の用心棒、海上自衛隊の6隻は日本のミサイル防衛の要である。
その最高機密が中国へ流れた可能性が浮上、日米両国政府はあわてた。
情報の流出元は横須賀基地でコンピューターのプログラム管理に携わる3等海佐だった。先輩に当たる広島県江田島の術科学校(教育機関)教官が、アクセスする資格がないのに3佐に頼んで入手。教官の部下が無断で大量コピーして仲間に配り、自慢した。受け取った一人が中国人女性の夫の2等海曹だった。
スパイ事件ではなく、中国政府に流れたわけではないが、漏らした3佐は逮捕され、懲役2年6月(執行猶予付き)が確定。3佐を含む3人が懲戒免職という自衛隊史上最悪の情報漏れ事件になった。イージス艦に守られながら、イージス艦の秘密保持には無頓着という日本の矛盾を、この事件は浮き彫りにした。
3佐は日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反に問われた。同法は自衛隊にのみ適用される。仮に情報が経済産業省(ここも武器を扱う)から漏れても刑事責任は問えない。
そもそも、法律と規則が整った自衛隊さえ、ゆるフン状態なのである。
軍事情報史の労作「インテリジェンス」(12年ちくま学芸文庫、小谷賢著)によれば、アメリカも昔はゆるゆるだった。東西冷戦で鍛えられた。イギリスの007の伝統は、第一次大戦以来、ドイツとの確執を通じて培われたものである。日本にも旧軍の伝統が残っていたが、1970年代を境に絶えた。
これらの歴史を顧みることは時代錯誤だろうか。イージス艦無用、日米安保無用、渡る地球に敵などいないと考える人々にとってはそうかもしれない。
私はそうは思わない。国際社会の波風はますます強く、しかもアメリカが警察官役から退いていく。日本の自立・自衛が問われている。軍事は邪悪、秘密は暗黒という過度の思い込みを改める必要がある。
秘密保護法案の最大の論点は、官僚が秘密を乱造し、闇へ葬るという不信だ。その恐れは十分にある。アメリカは秘密も多い(多過ぎて流出が続く)が、2500人を擁する国立公文書館の権限が大きく、管理が分権的だ。日本の公文書館はわずか40人で、霞が関の抵抗を覆す力はない。
秘密保護法案の問題は多いが、規制が緩いままではかえって社会の安全が脅かされる側面もある。
日本で活動し、日本を観察した旧ソ連のスパイに警句がある。「確かに民主主義は開放的な制度だが、民主主義そのものを損なうほど開放的であってはならないのだ−−」(「KGBの見た日本/レフチェンコ回想録」84年)
味わうべきだと思う。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)
(転載ここまで)
何度でも言いますが、そして、多くの人も指摘していますが、現在の法制度で情報の漏洩には対処できています。ですから、「特定秘密保護法」と政府が呼ぶ「不特定秘密隠ぺい法」がないとスパイに対処できないという主張そのものが誇張であり不適切です。
そのうえで言うなら、山田氏の記事の要約によれば、「第1次安倍内閣の2007年に起きたイージス艦情報漏れ事件」というのはどうみても、自衛隊内部の情報管理が甘すぎたということです。自衛隊員の配偶者だったこの「中国人女性」がスパイ行為をはたらいてこの情報を得たわけではありません。この件から教訓を得るとすれば、自衛隊員と結婚したり友人知人になったりするとこういうことに巻き込まれる危険性が高まるから一般人が自衛隊員と結婚したり友人知人になったりするのはやめておいた方がよい、ということではないかとすら思ってしまいます。少し前の記事、『
プライバシー侵害「調査」についての元自衛官の証言 (国民から「国民主権」を奪う「秘密保全法」 (メモ) (117))』で紹介した自衛隊周辺のプライバシー侵害の例からもそのように思ってしまいます。
「軍事は邪悪、秘密は暗黒という過度の思い込み」をこの山田氏は批判していますが、山田氏の議論の前提を見ると、逆に、「軍事は善意によって運営されており、国は国民を守るものだと過度の思い込み」があるとしか思えません。国は軍国主義によって国民を守ることはなく、軍国主義の国は国民を迫害するものだという具体的な実例の一つはまさに1945年までの大日本帝国であったという歴史的事実を見ているようにはとても思えない山田氏のこのような議論こそが甘すぎるのです。
「敵に漏れれば国の安全が脅かされる情報を、国が秘密にするのは当然のことである」という山田氏の主張を言い換えると、「国が秘密を隠したい相手は国の敵となりえる」ということになります。つまり、この「特定秘密保護法」は、日本政府が日本国民の目から情報を隠そうとしているのですから、日本政府は日本国民を「敵になる人々」であるとみなしていることにどうしてもなるのです。
一方、この「秘密」を日本政府はアメリカ政府と共有できるようにしています。そういう法案内容からは、日本政府にとっての「味方」は日本国民ではなくてアメリカ政府、日本政府にとっての「敵」は日本国民という異常な結論に必然的にいきつきます。
こう考えてくれば、「敵に漏れれば国の安全が脅かされる情報を、国が秘密にするのは当然のことである」という命題そのものが議論の出発点としても議論の運び方としても日本国民にとって不適切であり、有害だということにどうしてもなる、と思うのです。
このような主張をもとに与党が動かそうとしている政治に対する個人としての意思表示の方法として、うちでみなさんに提唱している一つの方法は、国会議員やマスコミへの投書です。どこに住んでいてもいつでも誰でもそれぞれの生活の中で自由に実行できることだからです。
「
『「秘密保護法案」を廃案にするためにはマスコミに電話!? その理由は?』 (佐藤潤一氏、マガジン9) (国民から「国民主権」を奪う「秘密保全法」 (メモ) (87))」の記事でも紹介したように、マスコミに電話や投書、国会議員にも投書。
●国会議員への投書のための「議員一覧ポータルサイト」 (1)→
http://taro-yamamoto.jp/お知らせ/【反tpp・反秘密保護法!】全国街宣キャラバンス/ ; (2)→
http://publistella.jp/●マスメディアへの投書のための「News for the people in Japan」マスメディア問い合わせ用リンク集→
http://www.news-pj.net/link/media.html●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集 (適宜更新)」経由で→
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html
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主張する事は、常に自分達特権階級の擁護ばっかり。
庶民が、病院でマイナカードの不具合で受診できまいがお構い無しで、不具合隠K.Mina相模原市の障がい者虐殺事件の容疑者が釈放されてニュースキャスター長谷川豊の名でネットメディアで「透析患者を殺してもよい」と言っているのかと思った。精神障害者である自分を肯定する人もいる。 昔は精神分裂病と言われた統合失調症は100人に1人がかかるごく一般的な疾患なのだそうです。日本の人口が1億2000万人であれば120万人が罹患していることになります。発祥Takeshi自国維公が国民の医療アクセスの命綱を切る作業を本格化させた2023年6月2日。民主主義者にとって自国維公に殴られ始める屈辱の日。 #保険証廃止法案の成立に抗議しますNo title>ブログ主様
>まだまだ闘わなければ日本の民主化は成し遂げられません。あきらめた時が負けです。
>決して腐ることなく、戦い抜きましょうと、多くの人に呼びかけ津木野宇佐儀自国維公が国民の医療アクセスの命綱を切る作業を本格化させた2023年6月2日。民主主義者にとって自国維公に殴られ始める屈辱の日。 #保険証廃止法案の成立に抗議します私はマイナンバーカードを持ちません。 私もマイナンバーカード取得強制に反対でコメントを2日前から投稿したのですが,F2ブログからはねられていました。よくあることですが。
私のもとには過去に市役所Takeshi問題なく使われている現行健康保険証廃止は自国維公(地獄行こう)から日本国民への暴力的攻撃。抗議と反対を続ける。 #保険証廃止法案の採決に抗議します まだまだ使えて誰も不便に思ってない道路をわざわざぶっ壊して新しい道路を作るようなことは東日本大震災の被災地ではよく見る光景です。復興という錦の御旗があれば無駄左の人問題なく使われている現行健康保険証廃止は自国維公(地獄行こう)から日本国民への暴力的攻撃。抗議と反対を続ける。 #保険証廃止法案の採決に抗議します朝日の劣化ここ数日で「朝日は滅びろ」というのが強くなりました。
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